「匿名・流動型犯罪グループ」、トクリュウによる強盗事件が相次いでいる。特筆すべきは「トクリュウ型」犯罪の凶悪さだ。先月、セキュリティー会社への相談が前年の40倍以上にも急増した。どうすれば凶悪犯罪から家と家族を守れるのか。
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闇バイト強盗の被害相次ぐ
「なぜ、うちが襲われたのか、わからない。早く犯人全員を捕まえてほしい」
千葉県市川市の住宅で庭先のカキの実をもぎながら、女性(72)は憔悴(しょうすい)した表情で語った。
女性は10月17日未明に発生した強盗致傷事件で被害を受けた。世の中を震撼させた闇バイト強盗の顛末はこうだ。17日朝、女性が夜勤から帰宅すると、部屋の中は激しく荒らされ、娘(50)の姿がなかった。娘は実行役に連れ去られており、17日夜、埼玉県内の宿泊施設で保護されたものの、激しく暴行され、ろっ骨など数カ所を骨折していた。
監禁容疑で現行犯逮捕された藤井柊(しゅう)容疑者の指紋は、横浜市青葉区で発生した強盗殺人事件のほか、千葉県船橋市の強盗致傷事件の現場からも検出された。
市川市と船橋市の現場は直線距離で7キロほどしか離れていない。船橋市の現場住宅には、犯人らが玄関から侵入した際に割ったとみられるガラスの破片が生々しく残っていた。
庭木が「目隠し」になっている
このところ、「匿名・流動型犯罪グループ」、トクリュウによる強盗や特殊詐欺事件が相次いでいる。指示役が匿名性の高いSNSなどで実行役を集めて、犯罪を行う。先述の神奈川・千葉での強盗・強盗殺人事件もトクリュウによるものとみられている。
いずれも暮らしていたのは、冒頭の女性をはじめごく普通の人々だ。なぜ、そんな住宅が狙われ、被害に遭ったのか。
セキュリティー会社、ALSOK(アルソック)を訪ねた。同社のセキュリティプランナー・島村大樹広報課長は資料を見るなり言った。
「ああ、樹木が完全に『目隠し』になっている」
市川市の被害者宅の南側はカキの木に覆われ、犯人らが壊して侵入した1階の窓は外からはまったく見えない。船橋市の住宅の玄関も同様に庭木で覆われていた。
「仕事がやりやすい家」を下見か
「犯人らが入念な下見を行ったうえで押し入っているのは間違いないでしょう」(島村さん)
同社HA企画課の松田博充課長はこう付け加えた。
「いったん敷地内に入れば、何をしてもばれないと考えたのでは。犯罪者の目には『仕事がやりやすい家』と映ったでしょう」