いま人類は、AI革命、パンデミック、戦争など、すさまじい変化を目の当たりにしている。現代人は難問を乗り越えて繁栄を続けられるのか、それとも解決不可能な破綻に落ち込んでしまうのか。そんないま、「世界を大局的な視点でとらえる」ためにぜひ読みたい世界的ベストセラー『早回し全歴史──宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』(デイヴィッド・ベイカー著、御立英史訳)だ。「ビッグバンから現在まで」の138億年と、さらには「現在から宇宙消滅まで」に起こることまでを一気に紐解く、驚くべき1冊だ。本稿では本書より特別にその一節を公開したい。(初出:2024年5月19日)

「宇宙の外」には何がある?→人間の理解を超える驚きの答えとは【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

人間の知る「物理法則」を超えた世界

 宇宙はどのようにして始まったのかという実存的な問いを考えはじめると頭が痛くなるが、それは無理もない。私たち人間の脳や知覚は、直感的に理解できる物理法則が支配するようになってから以後の宇宙の中で進化してきたので、それ以前の事象を了解するのが難しいのだ。

 人間の脳は、種として生き残るのに必要な範囲で、世界を本能的に理解できるように進化してきた。物は高い所から低い所に落ちる。原因があって結果がある。卵がニワトリになり、ニワトリが卵を産む。そういうことなら私たちは直感的に理解できるが、そんな世界に収まらない事象については、時間をかけて考えなければ理解できない。

 ごく小さな1個のかけらを想像してほしい。これは138億年前のビッグバンから10のマイナス43乗秒後の特異点だ。この小さなかけらの中に、すべてのエネルギーと物質、すなわちその後の歴史の展開に必要なすべての構成要素が包含されていた。そう説明されてイメージするものは人それぞれだろうが、そのかけらの外に空間があると想像するのは間違っている

 空間は宇宙の属性であり、宇宙の中にだけ存在する。宇宙が膨張すれば空間が広がるが、宇宙の外に空間があるというイメージは正しくない。

 夜空を見上げると無数の星がまたたく空間が広がっているが、あれは宇宙であって、宇宙の外にもあのような空間があるわけではない。ビッグバンの瞬間、かけらほどのサイズの宇宙以外には何もなかったのである。

 白い紙の真ん中に、ペンで小さな点を打ってみよう。そして、点の縁に沿って紙を切り取ってみよう。そのとき、あなたの指がつまんでいる、切り取られた小さな点が初期の宇宙だ。そのほかには何も存在しない。その点の中に、時間も、空間も、エネルギーも、一切合切が含まれている。それが生まれた瞬間の宇宙だ。それがテーブルの盤面のように広がっていき、現在も膨張を続けている。

(本稿は、デイヴィッド・ベイカー著『早回し全歴史──宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』からの抜粋です)