いま人類は、AI革命、パンデミック、戦争など、すさまじい変化を目の当たりにしている。現代人は難問を乗り越えて繁栄を続けられるのか、それとも解決不可能な破綻に落ち込んでしまうのか。そんな変化の激しいいま、「世界を大局的な視点でとらえる」ためにぜひ読みたい世界的ベストセラーが上陸した。17か国で続々刊行中の『早回し全歴史──宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』(デイヴィッド・ベイカー著、御立英史訳)だ。「ビッグバンから現在まで」の138億年と、さらには「現在から宇宙消滅まで」に起こることまでを一気に紐解く、驚くべき1冊だ。本稿では本書より特別にその一節を公開したい。
宇宙は「930億光年」の規模まで広がっている
ビッグバン後の最初の一瞬で、宇宙は量子のサイズからグレープフルーツのサイズに膨張した。そして1秒も経たないうちに太陽系より大きくなり、4年後には天の川銀河より大きくなっていた。
現在、私たちが知っている宇宙は930億光年の規模まで広がっている。宇宙が誕生してから138億年しか経っていないのだから、光がまだ地球まで届いていないほど遠くに、何十億年も前に生まれた無数の星や銀河があるということになる。地球から見ることのできる宇宙は「観測可能な宇宙」と呼ばれるが、その向こうに、私たちが見ることのできない多くのものがあるのだ。
また、遠くの物体が発した光は届くまでに時間がかかるので、遠くにあるものほど、私たちはその物体の昔の姿を見ていることになる。たとえば、アンドロメダ銀河(地球が属する天の川銀河の隣にある)は地球から250万光年離れている。したがって、いま望遠鏡で見えるのは、私たちの祖先がサーベルタイガーを警戒しながら地球上を歩きはじめたころのアンドロメダ銀河ということになる。
宇宙の形は「平ら」である。では、色は?
地球から見ると、観測可能な宇宙はあらゆる方向に広がっている。その意味では、観測可能な宇宙は球体である。しかし、宇宙全体の形はそうではない。
物理学者たちは、宇宙の曲率はほぼゼロであることを突きとめた。宇宙はどこかで内側に曲がったりせず、テーブルの平坦な盤面のように、あらゆる方向に広がっているという意味である。
観測可能な宇宙は、そのテーブルの盤面のごく一部、いわばコーヒーリング〔カップを置いたときにできる輪染み〕であり、地球はその輪染みの中の木の繊維の一つにすぎない。
はるか彼方にズームアウトして宇宙全体を見渡せば、宇宙はベージュ色をしていると考えられている。観測可能な宇宙のすべての星が発する光を混ぜ合わせたら、宇宙というバブルの色はベージュになるということだ。
宇宙学者はこの色調を「コズミック・ラテ」などと洒落た名前で呼んでいるが、要はベージュだ。私は、宇宙はベージュ色という事実が気に入っている。宇宙の威圧感がいくぶん和らぐからだ。
(本稿は、デイヴィッド・ベイカー著『早回し全歴史──宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』からの抜粋です)