いま人類は、AI革命、パンデミック、戦争など、すさまじい変化を目の当たりにしている。現代人は難問を乗り越えて繁栄を続けられるのか、それとも解決不可能な破綻に落ち込んでしまうのか。そんな変化の激しいいま、「世界を大局的な視点でとらえる」ためにぜひ読みたい世界的ベストセラーが上陸した。17か国で続々刊行中の『早回し全歴史──宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』(デイヴィッド・ベイカー著、御立英史訳)だ。「ビッグバンから現在まで」の138億年と、さらには「現在から宇宙消滅まで」に起こることまでを一気に紐解く、驚くべき1冊だ。本稿では本書より特別にその一節を公開したい。

【知ってる?】「ビッグバン以前には何があった?」という謎への答えとは?Photo: Adobe Stock

「ビッグバン以前」には何があったのか?

 ビッグバン以前に時間は存在しなかった。したがって「ビッグバン以前」というものはない。ビッグバンの前にも何かがあったという考えは、子どもが父親と母親を引き合わせたと考えるようなもので、論理的に不可能である。

 ビッグバン以前には宇宙も存在しなかった。ビッグバン以前には、何かが起こる空間がなかった。ビッグバン後、宇宙は顕微鏡でも見えないほど小さなサイズから現在の930億光年の大きさにまで拡大した(さらに拡大を続けている)。

 空間はビッグバン後に生まれたものだ。ビッグバン以前は、何かが動けるような空間はなく、何らかの変化が生じるような場もなかった。変化がなければ何も起こらず、歴史もない。時間によって計られる、意味あるものは何も存在しない

 要するに、ビッグバン以前に空間はなく、変化もなく、動いたり形を変えたりするものもなかった。

 もしビッグバン以前に何かが存在していたとすれば、それは人間にとっても、人間が知っている宇宙の基本法則にとっても、理解する手がかりさえない異質なふるまいをする何かであるはずだ。そこには、原因があって結果があるという順序も、過去・現在・未来という時の流れもない。

 よって、私たちの歴史はビッグバンから始まったのである。

(本稿は、デイヴィッド・ベイカー著『早回し全歴史──宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる』からの抜粋です)