今、世界中で「ストイシズム」の教えが一気に広がっている。日本でも、幸せな金持ちとストイシズムの興味深い関係を描いた『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』が話題だ。著者は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がベストセラーとなり、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたスコット・ギャロウェイ。日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOがダブル推薦する全米ベストセラーより内容の一部を特別公開する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

【要注意】「ハードワーク=人格者」を信じた人の末恐ろしすぎる末路・ワースト1Photo: Adobe Stock

ウォール街やシリコンバレーに蔓延している大きなウソ

「長時間働いている人は自制心があり、高潔で、強い」
というのは、ウォール街からシリコンバレーに至るビジネス界に蔓延している、大きなウソである。

私も長年、この俗説を信じ、真面目に働いていた。
富は築いていなかったが、一生懸命働いた。
だからこそ、自分は人格者なのだと思い込んでいた。

モルガン・スタンレーで働いていた20代の頃、徹夜は美徳とみなされていた。

「昨夜、どれくらい遅くまで残業していたか?」
を合言葉に、エルメスのサスペンダーをつけたオスのゴリラのような猛々しいエリートビジネスパーソンが、胸を叩きながら互いに競い合っていた。

エナジージェルを食事代わりに、ターキーサンドイッチをつくる3分の手間を節約しながら長時間働いた。

この本では、ある程度ハードに働くことをお勧めしている。
それは経済的自立のためだけでなく、人生を充実させるためにも欠かせないものだ。

「困難に率先して取り組め(Do hard things)」
というのは、最高のアドバイスだ。

ハードに働くことは個人的にも職業的にも成功に欠かせない。
ただし、それだけでは十分ではない。
さらに言えば、それは最も重要なポイントではない。

ただ一生懸命働くだけでは、資本主義という空虚なシステムにエネルギーを費やすだけだ。
愛する人を養うために強くなり、正義を貫けるように力を手に入れなければならない。

ただ仕事のためだけに働くのは、経済的な自慰行為にすぎない

一生懸命働いていることを言い訳にする人が多すぎる。
パートナーを軽んじたり、健康をないがしろにしたり、他人に対して無礼で残酷で搾取的であることを、ハードに働いているから許されると思っているのだ。

富の追求は、あくまでも建前のようなものだ。
努力をすることと人格を磨くことを同一視するのは、耳に指を突っ込んでポリスの『ロクサーヌ』を大声で歌い、自分を本当に突き動かしているもの、本当に取り組むべきものの声をかき消すことに等しい。

「ハードワーク=人格者」を信じた人の末路

ハードワークは必要だが、大きな代償を伴う。
そのコストを最小限に抑えようとするか、無視しようとするかで、大きな違いが生じる。その良い例は出費だ。

20~30代の頃を振り返ってみると、私にはお金を使うことに対する分別が欠けていた。
「一生懸命働いたから、いいものを買って当然」
「こんなに懸命に働いているから、貯金など必要ない。もっと稼げるようになる」
と自分に言い聞かせていた。

本書第2章の「フォーカスの法則」で触れるアドバイスは、第3章の「お金と時間の法則」で説明する支出と節約に関するアドバイスに従わない限り、意味をなさなくなる。

ハードワークと人格を誤って同一視すると、浪費癖より重大な問題を見えなくしてしまう。

私のキャリアの最初の20年間における最大の失敗は、他人や人間関係に投資しなかったことだ。

ハードワークはそのための都合のいい言い訳だった。
すべて自業自得だった。
うわべだけの友人関係やパーティだけでのつき合いは、責任を伴わなかった。
誰も、金遣いの荒さを改めるように助言してはくれなかった。

だからこそ、富を築くことは、全人格的なプロジェクトでなければならないのだ。

(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)