昨年は「新NISA&『オルカン』投資」が話題となった。だが、まだ投資をやったことがない人や、投資を始めても次の一手がわからない人も多いかもしれない。そんな中、世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOが絶賛する全米ベストセラーが話題となっている。世界的ベストセラー『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者で、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたニューヨーク大学スターン経営大学院教授スコット・ギャロウェイの『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』だ。9社を起業した連続起業家でもあり、日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 本書から抜粋・編集してお届けする(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。
日本人が知らない「富の柱をかじるネズミ」とは?
「複利」には悪しき双子の片割れがいる。
インフレーションだ。
利回りが複利で資産を増やしている一方で、インフレは同じ複利の力を使ってそれを容赦なく減らしていく。
それは富の柱をかじるネズミであり、家の土台を腐らせるものだ。
インフレは、決して下がることのない上げ潮だ。
私たちは、インフレ自体を避けられない。
だが、その影響から逃れる方法が1つある。
それ以上のペースで資産を増やすことだ。
インフレも複利も数学的な仕組みは同じだが、その方向が違う。
インフレ率を年3%とすると、現在100ドルの商品は1年後には103ドルになる。
将来的にそれがどうなるかは、想像できるのではないだろうか。
年率3%のインフレが続くと、10年後に同じ100ドルの商品価格は134ドルになる。30年後(老後資金を考えるのなら十分に現実的な期間だ)、この商品価格は243ドルになる。
別言すれば、年3%のインフレが続く場合、30年後の老後生活で現在と同じ購買力〔訳注:ある単位の通貨でモノやサービスを買える量〕とライフスタイルを享受するには、今の2.5倍の生活費が必要になるということだ。
これは好ましいシステムではない――それは実質的にあらゆるものに課される税金と同じであり、経済的自立に至る道のりを極めて険しくする。
しかも、その税金を取られる見返りとして目に見えるメリットもない。
しかし、インフレが経済を動かす根本的な力であることは間違いない。
その力を無視すれば、私たちは危険を冒すことになる。
FRBなどの中央銀行はインフレ率にある程度の影響力を持ち、年率2%前後に抑えようとしているが、成果はまちまちである(インフレ率の測定に用いられる物価指標には様々なものがある。
メディアでよく目にするのは消費者物価指数=CPIで、これは消費財価格を集計したもの)。
21世紀に入ってからのアメリカのインフレ率は基本的に低めだったが、2022年には年率8%に達した。
だが、それを上回る国もあった。
アメリカの過去100年間のインフレ率は年平均約3%。
計画を立てるには良い数字だ。
30年後の10万ドルは、
今日の4万1200ドルの価値しかない
インフレはすべてのモノやサービスに対して一様に作用するのではない。
特に教育費と医療費はここ数十年、インフレ率を上回るペースで上昇している。
1980年以降、大学の授業料は年間約8%ずつ上昇している。
テクノロジーにはデフレ圧力がかかりやすい。
コンピュータの価格は年々安くなり、性能も向上している。
つまり、同じパフォーマンスあたりの価格は急落している。
また、長期的なトレンドとは関係なく、かなりの価格変動が見られる分野もある。
たとえばガソリンは、過去20年間に何度も1ガロン(約3.785リットル)あたり2~4ドルの間を行き来している。
インフレは、所与のものと考えたほうがいい。
そのため資産を築くためには、その分、高い目標を設定する必要がある。
長期的な資産運用の計画を立てるときは、年月の経過とともに物価が上がることを考慮しなければならない。
年収が10万ドルあれば、今なら豊かな生活を送れるだろう。
だが、30年後の10万ドルは、今日の4万1200ドル相当の価値しかないことを忘れてはいけない。
生まれたばかりの子どものために、大学の学費の貯金を始めたとしよう。
現在、大学4年間の授業料の相場が20万ドルとすると、インフレのために、子どもが大学に行くときには約36万ドルが必要になる可能性が高い(これは授業料が年間3%上昇したと仮定した場合だ。実際にはもっと高くなる可能性がある)。
(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)