
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第104回(2025年8月21日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
天才に化けるか凡人で終わるかは
苦しくても努力を続けられるか
ある日、いせたくや(大森元貴)が訪ねて来て、嵩(北村匠海)と曲を作りたいという。さらに、彼はテレビドラマの脚本の仕事も持ってきた。
漫画を描くうえでも役に立つといういせ。「いまは漫画もストーリーが大事じゃないですか」と。
そしていまはどんな漫画を描いているのか聞くと、嵩はあまり描けていないと答える。
ほかの仕事が増えすぎて何を書きたかったのかわからなくなっていた。
嵩が重宝されるのはクオリティももちろんのこと締切を確実に守ることだった。「ファイティングやない」「困ったときにやなせさん」と信頼される人なのだ。
のぶ(今田美桜)が八木(妻夫木聡)に依頼されていた宣伝用の絵を届ける(のぶ、こんな仕事を……)。嵩の苦悩を伝えると、天才ゆえの悩みという。蘭子(河合優実)が天才なの?と聞くと、
「天才で終わるか凡人で終わるかは苦しくても続ける努力ができるかどうかだ」
と名言。
そう、心の持ちようなのだ。続ける天才であることが大事なのだ。
子ども番組で子どもと触れ合うこと、脚本に挑んでストーリーの構成を学ぶこと、宣伝用の絵を描いて大衆の求めるものを学ぶこと。すべてがのちのち嵩の役に立つことだろう。
漫画を書けないまま、漫画用に思いついたストーリーをドラマの脚本にする話が持ち上がる。脚本の書き方も知らないのに脚本を依頼される嵩。
戦後間もないこの時代、いろんなものがまだ確立されていなくて、誰もが挑戦できたいい時代なのかもしれない。
カフェで打ち合わせしている嵩の様子をのぶと健太郎(高橋文哉)が背後で見ていると――