同県の観光意欲度は、昨年の28.3点から32.4点に上昇。また、体験型観光が子育て世代に人気となり、特に関東圏在住者及び30~40代の観光意欲度が顕著に増加している。体験型観光への参加意欲が高い世代である30代は、昨年の27.2点から35.0点に上がっている。

 一方、埼玉県が最下位になってしまった理由について、田中社長は「県内の観光地が十分に認識されていないことにある。川越や秩父といった観光名所があるものの、“埼玉県にある”といった観光認知度が低い」と指摘したうえで、県民性にも要因があるという。

「埼玉県民は県内での移動が少なく、県内の観光地への訪問者が少ない。例えば、大宮から川越までは比較的近い距離であるにもかかわらず、県外へ出かけることが多く、県内での観光が成立しにくいという課題があるのだろう」と推測する。

「遠方からお客を呼び込む」はもう古い
地域観光活性化に今重要なこととは?

 日本の観光業が直面している課題の一つは、地域内での観光の活性化だ。従来の「遠方から観光客を呼び込む」という戦略ではなく、地域内での移動の促進が求められている。

「地元住民や近隣の人と、観光客が観光地や施設の周辺を回遊し、地元経済に貢献できる仕組みが重要である。例えば、兵庫県の城崎温泉や群馬県の草津温泉では、観光客が夜の温泉街を歩きながら地元の飲食店を利用する“外歩き”が特徴的で、街全体で観光を盛り上げる取り組みが行われている」と田中社長。

 このような取り組みにより、観光地の魅力が高まり、持続可能な観光が実現しているのではないだろうか。

 北海道や沖縄県のように、地域創生を見据えた戦略が成功しているケースがある一方で、地域全体で観光を盛り上げる新しい観光戦略が必要な地域が多いと考えられる。
 
 観光で訪れる側の人たちも、各地域の取り組みを事前にリサーチした上で現地を訪れると、より興味の幅が広がるのではないか。

(フリーライター 西嶋治美)