介護ベッドに横たわる年老いた母親と介護に疲れて眠り込む娘写真はイメージです Photo:PIXTA

「歯が減っても、食べづらくなるだけ」。そう思っているなら要注意だ。実は、歯の本数が少ない人ほど、要介護老人になるリスクが高いことがわかっている。しかもそのサインは、口の中だけにとどまらない。親を寝たきりにさせないために、私たちにできることとは何か。※本稿は、水口俊介『からだの「衰え」は口から 歯と健康の科学 健康寿命を左右する口のケアの最前線』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

歯が多く残っているほど
人は長生きできる?

 歯が残っていると、う蝕(編集部注/いわゆる虫歯のこと。歯が細菌によって溶かされる病気)や歯周病などの問題が起こるとはいえ、やはり自分の歯が残っているほうがいいことには変わりありません。

 いくつかの研究を紹介しましょう。北九州地域の高齢者福祉施設の入居者1959名に対する追跡研究では、歯が1本もなく総入れ歯も使っていない人は、残存歯20本以上の人と比べると、身体的健康状態は10.3倍、精神的健康状態では3.1倍悪化しており、健康悪化に対するリスクが非常に高かったと報告されています(注1)。

 図4-2は、イタリアのある地域の70歳から75歳の女性を、残存歯によって3つのグループに分けた生存曲線です(注2)。

図4-2:義歯の使用・不使用と寿命との関係同書より転載 拡大画像表示

 生存曲線は階段状になっていますが、階段を下りるたびに何人かが亡くなっている状況を表しています。