「人の実力以上を引き出してくれる、ある要因があります」
そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さんだ。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援も行う。
その金間さん待望の新作『ライバルはいるか?』は、「競争」をテーマにしたビジネス書だ。今の時代、「競争なんて必要ない」「みんなで仲良くしないといけない」と考える人は多い。会社や学校でも、競争させられる機会は減った。その一方で、「誰かと競うことには本当に負の側面しかないのか?」と疑問を抱いた金間さんは、社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べた。そこから見えてきた「競争」の意外なメリット・デメリットをまとめたのが同書だ。この記事では、本書より一部を抜粋・編集してお届けする。
ライバルの持つ効果についての研究は、先述の通り世界的に見ても数少ない
だが、存在しないわけではない。
そこで、あらためて著名な論文を参照し、ライバルがもたらす恩恵を紐解いてみよう。
競争に関する「ある調査」
まずは、本書でも何度か登場する著名な研究者であるKilduff氏の論文「Driven to Win: Rivalry, Motivation, and Performance」から。
この論文は、個人間の競争関係と、それがタスクへのモチベーションとパフォーマンスに与える影響を調査したものだ。
具体的には、2007年から2009年までの112回に及ぶ陸上の長距離レースに関する膨大な記録を整理し、出場者1263人における競争相手の有無と彼らの成績を検証した。
25秒もタイムが縮まったランナー
その結果、自身のライバルが出場するレースでは、調査対象のランナーは普段より速いタイムを記録していることを発見した。
たとえば5kmのレースでは、ライバルがいない場合と比較して、平均しておよそ25秒もタイムが短縮していたことが明らかになった。
無論、論文ではこの結果に対し様々な角度から検証が行われていて、こうしたタイムの短縮効果は、ランナーの性別やもともとの能力には依存していないことも証明している。
調査が指摘した「ライバルの副作用」
ただし、この調査結果には、ライバルの存在におけるいくつかの危惧すべき点も指摘されている。
とくに納得感が高いのがこれ。
「同一のレースにライバルがいることによって、ペース配分が乱れる可能性がある」
これはありそうだ。
ライバルとの戦いに意識が集中し過ぎて、本来のペースを逸脱してしまうことは、容易に想像できる。場合によっては、ライバル関係にあるふたりが集団から抜け出して暴走、なんてことも考えられなくはない。
ライバルがいることで普段以上の力が出せるのはいいことだが、他方で、普段通り、練習通りという姿勢を保つことも必要なようだ。
(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
書籍『ライバルはいるか?』では、社会人1200人に行った調査や、世界中の論文や研究からわかった「競争」の認識が変わる様々な事実が掲載されています。この本で、ライバルとともに切磋琢磨する「充実した人生」を手に入れましょう!
★仕事の満足度が高まる★
★自分の成長を実感できる★
★人生の停滞感を打破できる★
研究者が1200人を調査して解明。
知れば人生が変わる
「競争」の真実!!
誰かと競うことは本当に「悪」なのか?
1200人を徹底調査してわかった「意外な真実」!!
★ベストセラー『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』の著者、渾身作!!
現代では「みんな仲良く」が正義とされ、「競争」は徹底的に排除された。しかし、本当に競争は「悪」でしかないのだろうか?
そこで1200人を対象に調査を行い、世界中の研究や論文を調べたところ、驚くべき真実が見えてきた。
「競争」から逃げて、実力を秘めたままでいるか。
「競争」の力を借りて、実力以上を発揮するか。
賢く選ぶために知っておきたい真実を、この本でお伝えしよう。
第1章 ライバルは敵か、味方か―1200人調査で判明した意外な事実
たくさんいる人たちの中で、どこか気になる存在/ライバルは相反する感情をもたらす/1200人のライバル実態調査の結果から/ライバルはどこに現れる?/「幸福度」に関する驚きの調査結果……など
第2章 現代からライバルが消えた理由―こうして日本社会は競争を葬った
「競争相手」のいない世界/競争は、いつから「悪」になったのか?/「みんな仲良く」という時代の副作用/「無菌状態化」する日本企業の職場環境/競争がなくなったことで失われた光景……など
第3章 ライバルの真のイメージ—それは本当にネガティブな存在なのか
負けることは、恥ずかしいことなのか?/1151人が抱くライバルのイメージ/ライバルがいない人ほど、ライバルを「恐れる」/ライバルがもたらす、大切な「ある感情」……など
第4章 ライバルがいるから頑張れる―意欲と満足度に与えるプラスの影響
入社3年目の「社内マップ」/ライバル観の4つのタイプ/なぜ若手にとって「目標型ライバル」は重要なのか?/統計に表れた「ライバルの有用性」……など
第5章 ライバルこそがあなたを成長させる―競争の果てに得る4つの成長実感
スーパー技術者たちの戦い/なぜ勝者も敗者も、同じ感情を抱くのか/ライバルの有無と成長実感の関係/あの人がいなかったらここまで来れなかった……など
第6章 恋のライバルと戦う—敗北は人生に何をもたらすのか
人が恋に落ちる瞬間/エスカレーターの一段に無限の宇宙を感じる/「恋のライバル」という残酷な存在/4人の恋の結末……など
第7章 ライバルの効能を科学する—世界の研究が明らかにした成功との相関
25秒もタイムが縮まったランナー/膨大な先行研究から導き出した2つの有用性/「比較された従業員」が辿る、正の道と負の道/ライバルのいる人といない人、どちらの年収が上か……など
第8章 ライバル意識のダークサイド―敵対心という心の闇との向き合い方
アメリカで出会ったイケメンの友だちと天才/勝たなければいけないという気持ちが行きつく先/「勝利至上主義」の是非とライバルに対する敵意/「足を引っ張る」ことに喜びを感じる日本人/どんな人が現れても、揺さぶられない自分でありたい……など
第9章 自分という最強のライバル—勝者であり続ける人が戦っているもの
ライバル研究「最大の疑問」/「若くして頂点を極めると成長が止まる」は本当か/藤井聡太がダークサイドと決別した瞬間/364日は「過去の自分」の勝ち/過去の自分に勝つ方法……など
第10章 ライバルと手を組むとき―最高のチームが誕生する瞬間
真に「競争から協調へ」が実るとき/「チームの一員としてふさわしいか」というプレッシャー/この世界は個人戦でできている/自分にしかできない何かを見つけるために……など