「他人と比べてはいけない」「競争なんてせず、仲良くしよう」。今の時代、そんな同調圧力が蔓延している。実際、会社や学校からは競争が排除され、「誰かと競うこと」はほとんどなくなった。しかし、その「協調主義社会」に疑問を抱いたのが、『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』などをベストセラーを著書に持つ、金沢大学教授の金間大介氏だ。
「無理をしてでも他者と仲良くしないといけないのか?」「誰かと競うことには本当に負の側面しかないのか?」。そんな疑問がテーマになっているのが、金間さんの新刊『ライバルはいるか? ー科学的に導き出された「実力以上」を引き出すたった1つの方法』だ。社会人1200人に行った調査や、世界中の論文や研究をもとに「競争がもたらす影響」を科学的に解明した。「読んでモチベーションが上がった」「若手社会人の頃に読みたかった」と話題になっている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集してお届けする。
「みんなと仲良くしましょう」
それが素晴らしいことはわかるが、その同調圧力の裏で失われたものもあるのではないだろうか?
そこで社会人1200人を調査し、世界中の論文や研究を調べたところ、意外な真実が見えてきた。この事実は、他者と無理に仲良くすることにしんどさを感じている人にとって救いになるかもしれない。
ここでは、「職場の同期をライバル視すること」に関する調査結果をお伝えしよう。
20〜40代「640人」の調査結果
現在の日本では、人材(とくに若手人材)の確保や育成に関する議論が活況を呈しているが、ことライバルに関する調査や論考は驚くほど少ない。このことは競争に関しても当てはまる。
後章で論じることにするが、この辺りには、現在の日本の「競争より協調」「競い合いより助け合い」「個人よりみんな」といった風潮が影響しているように思う。
そんな中、僕の研究以外にも1つだけ先行調査を見つけたので、敬意をもって引用させてもらおう。
紹介したいのは、主に「マイナビ転職」サイト内で運用・展開されている「シゴトサプリ」が2017年に行った調査で、首都圏の20代から40代の社会人男女を対象としたアンケートだ。計640名がこれに回答している。
この調査によると、「仕事のライバルとしてあなたが意識している人はいますか?」という問いに対し、「いる」と答えた人は42・8%となっている。
僕が社会人1200人に行った調査結果よりもライバル「あり」の比率が高くなっている。これは首都圏に限定していることが影響していると考えられる。
2割の人が「同期をライバル視」している
そして、ライバル視する相手としては、同期が圧倒的多数となっている。
アンケート回答者640人のうち、20.6%が職場の同期をライバル視している。
「同級生・友人」も含めると、同年代のライバル率はさらに上がることになる。
同期らをライバル視する理由としては、「仕事ができるから」とする人が多く、納得感のあるところだ。
また「先輩・上司」の割合もそれなりに高くなっていて、こちらは「尊敬できるから」という理由がつくのも、また納得感がある。
他方、面白いのは「後輩」だ。少ないながらも「後輩」を選択した回答者がいる。実際、僕のインタビューでも、「後輩のライバルがいる」と答えた回答者は一定数存在していた。
年齢や性別といった属性によって相手をライバル視するだけでなく、能力や知識といった内面的要素によっても、他者をライバル視することはあるということだろう。
無理に「仲良く」しなくてもいい
職場の同期が仕事で結果を出す。
先輩が自分よりも良い仕事をする。
後輩に、仕事の結果で抜かれる。
そこには「悔しい」「負けたくない」という競争意識が、おのずと芽生えてくるものだ。
「仲良くしなきゃ」「比べちゃダメだ」と焦って、その気持ちにフタをする必要はない。
他者との競争によって、自分の実力以上の力が出る。
負けたくないと焦るうちに、おのずと行動できる。
勝ちたい一心で自己を磨き、成長を感じることができる。
そんなことも、今回の研究でわかってきた。
誰かと競うことは、けっして悪いことではない。
気になる相手を「ライバル」と認めて、切磋琢磨していこう。
(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)