「ライバルという存在が、仕事のパフォーマンスを高めてくれます」
そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さんだ。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援も行う。
その金間さん待望の新作が『ライバルはいるか?』だ。今の時代、「誰かと競う必要なんてない」「みんなで仲良くしないといけない」と考える人は多い。会社や学校でも、競争させられる機会は減った。その風潮に疑問を抱いた金間さんは、社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べた。すると、そこから「ライバル」という存在がもたらす意外な影響が見えてきた。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して、調査で判明した「ライバルの影響を示した海外の研究結果」を紹介する。
ライバルの持つ効果についての研究は、先述の通り世界的に見ても数少ない。
だが、存在しないわけではない。
そこで、あらためて著名な論文を参照し、ライバルがもたらす恩恵を紐解いてみよう。
ライバルがもつ「2つの有用性」
『Organizational Psychology Review』という、組織心理学の分野で非常に著名なジャーナルに掲載されたレビュー論文を取り上げよう(Milstein et. al. 2022)。
この論文では、ライバルとパフォーマンスの関係について報告している多くの先行研究に対し、システマティックレビューという手法を用いた分析を行っている。
システマティックレビューとは、一言で言うと、可能な限り共通する研究や比較可能な研究ごとに先行研究を分類することで、バイアスの影響を極力排除した上で総括的な分析結果を示すことを指す。
その結果、同論文では次の2点を結論として挙げている。
① ライバル関係はモチベーションとパフォーマンスを全般的に高める効果がある
② ライバル関係がグループ間ではなく個人間の場合、その効果はよりいっそう強く表れる
「個人間」と「グループ間」で影響が異なる
とくに2つ目の、グループ間と個人間の違いは興味深い。
この論文によると、全般的に個人間の方がライバル関係の影響が強く現れるという。
ただし、スポーツの領域においては、グループ間のライバル関係も強く作用していることを見出している。
この点についての解釈は難しいが、スポーツはルールが公平で明確だからではないかというのが僕の仮説だ。
よって、仕事においてグループ間競争を促す場合には、いかに公平で明瞭なルールを設定できるかが大きなポイントとなりそうだ。
「ライバル」は欠かせない存在
実際、僕が社会人1200人に行ったアンケート調査でも、以下の回答が得られた。
ライバルが「いる人」は、「いない人」と比べて、
26%も、仕事への「意欲」が高い。
33%も、仕事の「満足度」が高い。
36%も、「成長」の実感度が高い。
28%も、「年収」が高い。
そして39%も、「幸福度」が高い。
このことからも、人生を豊かにするうえで「ライバル」という存在は欠かせないと言えるだろう。
(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
書籍『ライバルはいるか?』では、社会人1200人に行った調査や、世界中の論文や研究からわかった「競争」の認識が変わる様々な事実が掲載されています。本書を読めば、「競争」を力に変えて、「充実した人生」を手に入れられるでしょう!
★仕事の満足度が高まる★
★挑戦する勇気をもらえる★
★人生の停滞感を打破できる★
研究者が1200人を調査して解明。
知れば人生が変わる
「競争」の真実!!
誰かと競うことは本当に「悪」なのか?
1200人を徹底調査してわかった「意外な真実」!!
★ベストセラー『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』の著者、渾身作!!
現代では「みんな仲良く」が正義とされ、「競争」は徹底的に排除された。しかし、本当に競争は「悪」でしかないのだろうか?
そこで1200人を対象に調査を行い、世界中の研究や論文を調べたところ、驚くべき真実が見えてきた。
「競争」から逃げて、実力を秘めたままでいるか。
「競争」の力を借りて、実力以上を発揮するか。
賢く選ぶために知っておきたい真実を、この本でお伝えしよう。
第1章 ライバルは敵か、味方か―1200人調査で判明した意外な事実
たくさんいる人たちの中で、どこか気になる存在/ライバルは相反する感情をもたらす/1200人のライバル実態調査の結果から/ライバルはどこに現れる?/「幸福度」に関する驚きの調査結果……など
第2章 現代からライバルが消えた理由―こうして日本社会は競争を葬った
「競争相手」のいない世界/競争は、いつから「悪」になったのか?/「みんな仲良く」という時代の副作用/「無菌状態化」する日本企業の職場環境/競争がなくなったことで失われた光景……など
第3章 ライバルの真のイメージ—それは本当にネガティブな存在なのか
負けることは、恥ずかしいことなのか?/1151人が抱くライバルのイメージ/ライバルがいない人ほど、ライバルを「恐れる」/ライバルがもたらす、大切な「ある感情」……など
第4章 ライバルがいるから頑張れる―意欲と満足度に与えるプラスの影響
入社3年目の「社内マップ」/ライバル観の4つのタイプ/なぜ若手にとって「目標型ライバル」は重要なのか?/統計に表れた「ライバルの有用性」……など
第5章 ライバルこそがあなたを成長させる―競争の果てに得る4つの成長実感
スーパー技術者たちの戦い/なぜ勝者も敗者も、同じ感情を抱くのか/ライバルの有無と成長実感の関係/あの人がいなかったらここまで来れなかった……など
第6章 恋のライバルと戦う—敗北は人生に何をもたらすのか
人が恋に落ちる瞬間/エスカレーターの一段に無限の宇宙を感じる/「恋のライバル」という残酷な存在/4人の恋の結末……など
第7章 ライバルの効能を科学する—世界の研究が明らかにした成功との相関
25秒もタイムが縮まったランナー/膨大な先行研究から導き出した2つの有用性/「比較された従業員」が辿る、正の道と負の道/ライバルのいる人といない人、どちらの年収が上か……など
第8章 ライバル意識のダークサイド―敵対心という心の闇との向き合い方
アメリカで出会ったイケメンの友だちと天才/勝たなければいけないという気持ちが行きつく先/「勝利至上主義」の是非とライバルに対する敵意/「足を引っ張る」ことに喜びを感じる日本人/どんな人が現れても、揺さぶられない自分でありたい……など
第9章 自分という最強のライバル—勝者であり続ける人が戦っているもの
ライバル研究「最大の疑問」/「若くして頂点を極めると成長が止まる」は本当か/藤井聡太がダークサイドと決別した瞬間/364日は「過去の自分」の勝ち/過去の自分に勝つ方法……など
第10章 ライバルと手を組むとき―最高のチームが誕生する瞬間
真に「競争から協調へ」が実るとき/「チームの一員としてふさわしいか」というプレッシャー/この世界は個人戦でできている/自分にしかできない何かを見つけるために……など