【老後】家を売る前に知るべき「不動産の超基本」
総務省の調査によれば、老後1か月の生活費は、60代の世帯で約30万円、70代以上の世帯で約25万円かかると言われている。仮に90歳まで生きるとすれば、60歳からの30年間で9600万円が必要になる(30万円×12×10+25万円×12×20)。病気や介護といった問題も無視できない。
本連載は、終活や相続に関するノウハウを紹介し、「お金の不安」を解消するものだ。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。この度、5000人の声を集めたエンディングノート『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を出版する。銀行口座、保険、年金、介護、不動産、NISA、葬儀といった観点から、終活と相続のリアルをあますところなく伝えている。お金の不安を解消するためのポイントを聞いた。

【老後】家を売る前に知るべき「不動産の超基本」Photo: Adobe Stock

「家を売る前」に知っておきたいこと

 本日は「終活と不動産」についてお話しします。年末年始、家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。

 まず、あなたが毎年支払っている固定資産税納税通知書。この書類には必ず、固定資産税の課税明細書といって、あなたが所有している不動産の所在や地積、固定資産税評価額といった情報がまとめられた書類が同封されています。

 課税明細書をしっかり管理しておけば、家族は不動産の詳細を把握できるのでとても助かるはずです。固定資産税評価額は3年に一度変わりますが、所在や面積などは時が経っても変わりませんので、毎年、差し替えなくても問題ありません(ただ、新しい情報に越したことはないので、余裕のある方は毎年差し替えましょう)。

 ここで注意すべきは、私道や保安林などの非課税不動産や、免税点未満の不動産は、課税明細書に記載されない可能性がある点です。

 そのような不動産がある場合は、名寄帳(なよせちょう)といって、あなたがその市区町村内で所有しているすべての不動産の情報をまとめた書類を役所から発行してもらえますので、しっかり管理しておきましょう。

 課税明細書や名寄帳が入手できたら、次に、その不動産を買った時の金額を明確にしましょう。これは、将来その不動産を売却する際に、所得税を計算するのに必要になるからです。不動産を売却した時の税金は非常にシンプルで、その不動産を買った金額と、売った金額を比較して、売った金額のほうが大きければ、その差額に対して15.315%の所得税と5%の住民税が課税されます。

 例えば、5000万円で買った土地が、8000万円で売れたなら、差額の3000 万円に20.315%をかけ、約600万円の税金がかかります。建物については、買った金額から時の経過に伴う減価償却費を差し引くので、土地よりも計算が少しだけ複雑です。ご自身で計算することが難しい方は、事前に税理士や税務署にご相談ください。

 年末年始が近づいてきました。親族で顔を合わせる機会がある人も多いかと思います。終活や相続のことで家族と話し合う際、ぜひ参考にしてください。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を一部抜粋・編集したものです)