ギャンブル依存症者のための自助グループ「ギャンブラーズ・アノニマス(GA)」が全米で開催している会合に、新しいタイプの依存者が参加し始めている。リスクが極めて高い市場の取引にはまった投資家だ。
ニューヨーク市マンハッタンのマレーヒル地区で開催された会合では、ある男性がオプションを株式市場の「クラックコカイン」と呼んだ。別の男性は株に倍賭けするために高利貸から金を借り、数十万ドルの取引損失を抱えていると話した。またある若い男性は最後の賭けから1年たったことを祝うため、母親とガールフレンドを連れてきていた。
その晩、混み合った教会の地下室には、彼らを含め60人ほどが金属製の折り畳み椅子に座っていた。ほぼ全員が男性だった。その中に、スポーツ賭博アプリやラスベガスのカジノではなく、ロビンフッドのような株取引アプリへの依存との戦いについて語る人々がいた。
会合に参加していた男性の多く、そして全米各地の大勢の人々が、2020年に始まったコロナ下のブーム時に取引や賭けに出会った。中には、ミーム(はやりネタ)株など話題になった株の取引で大勝ちして引き込まれ、少額の資金を投じて手に入るかもしれない巨額のリターン――多額の損失を被ることの方が多い――を追いかける、さらに強力な賭けをするようになった人もいた。
ウーバー・イーツでテイクアウトを注文したり、アマゾンで洗面用品を購入したりするのと同じくらい簡単に取引ができるアプリで、暗号資産(仮想通貨)を売買していた人もいた。スポーツ賭博――iPhone(アイフォーン)上のアプリを親指でフリックするだけで賭けができる――が娯楽として世間に認められる時代になり、彼らはドージコインや テスラ 、エヌビディアに賭けると、パトリック・マホームズ選手の活躍で米プロフットボールリーグ(NFL)のカンザスシティ・チーフスがスーパーボウルに進出することに賭けた時と同じ興奮を感じることに気付いた。