男子中学生写真はイメージです Photo:PIXTA

SAPIXの広野雅明先生に「中学受験の素朴な疑問」をぶつける連載。長年にわたって、多くの学校を自身の目で見てきた広野先生に「評判以上に満足度が高い中高一貫の男子校」を4校挙げてもらった。より多くの人が「自分に合う学校」を見つけられるように、特徴が異なる学校を紹介する。「学校選び」の参考にしてほしい。本稿は、学校に対する満足度を左右する要因を解説するところから始まる。(聞き手・文/教育アドバイザー 鳥居りんこ)

連載王者・SAPIXが教える『中学受験の正攻法』をフォローすると最新記事がメールで届くので、読み逃しがなくなります。

学校の満足度を左右する
「3つの要素」


「満足度が高い学校」を、一概に定義するのは簡単ではありません。学校への満足度は、様々な要素が関係してきますし、自分でコントロールできるものばかりではありません。なので、学校名を出しますが、あくまで私の個人的な感想に過ぎないという点はご留意ください。

 学校名を挙げる前に、学校の満足度を左右する要素を洗い出してみましょう。

 1つ目は「学校との相性」です。学校の教育方針とお子さまとの相性は当然ですが、そこで出会う「人」との相性も重要となります。

 やはり、多感な中高時代は他人の影響を良くも悪くも受けやすい時期なので、先生や友人、先輩や後輩などの人間関係も満足度に強く影響します。

 その子にとって相性の良い尊敬すべき先生方がいたとか、かけがえのない友人に出会ったという場合は志望順位にかかわらず、満足度は高くなるはずだと思います。

 加えて、「家庭の教育方針との相性」も大事になります。

 2つ目は、「学力」です。学校選びで重要な点が本人の学力と学校のレベルを適切に合わせることです。「適切に」が意味するところは、無理をしすぎないで入れるかどうかということです。

 例えば、無理に猛勉強した末に、開成や筑駒といった最難関校に進学することができたとします。同じ合格者でも、余裕を持って入学する生徒とガリガリ勉強して入学した生徒では、入学後に同じだけ勉強してもどうしても差が出てしまう。

 当然、中学入学後は英語も加わりますし、算数と数学は似て非なる教科ですので、中学受験時の学力と中学での成績は一致するとは限りません。ただし、ある程度の相関関係はあります。中学受験は、楽しみながら余力を持って入れる学校を選んだほうが入学後に過ごしやすいのは事実です。

 就職も昔のように大企業に入れば一生安泰という時代は終わりました。今、本当に賢い子の中にはイノベーターとして、起業する人が増えています。好きでもないことを無理やりというより、好きで打ち込めるものをとことん突き詰めるという価値観が勉強でも就職でも大事になっている気がしますね。

 3つ目は、「課外活動の充実」です。親目線で満足度を考えると、中学校の偏差値に対してより高い偏差値の大学に合格すれば、満足度は高くなります。ただ、中高一貫の生活の中でクラブ活動や学校行事などで大活躍できれば、難関大学に合格できなかったとしても満足感を感じる子もいるでしょう。

 このように学校の満足度を決める要素は、数多くあります。したがって、本当に満足がいくかどうかは卒業してみるまで分からないのです。そして、その判断は周りではなく、あくまで子ども自身が下すものであることも忘れてはなりません。

 ここまで申し上げたことを前提として、好意的な意見を多く聞く学校を「満足度が高い学校」として紹介します。もちろん、どの学校にも否定的な意見をお持ちになる保護者や生徒は一定数いらっしゃいます。そして、塾として推薦するものではなく、私の個人的な感想にすぎないという点もご留意ください。

 私学は良い悪いというより、多様性が重要だと考えています。あるお子様にとってはベストな学校であっても別のお子様にとってはそれほどよい学校ではない場合もあります。異なる特色を持つ4つの学校を取り上げることで、その子に合う学校を見つけやすくしています。

 もちろん、この4つの学校以外にも多数の男子校がありますので、お子様にとって、ベスト、ベターな学校があることも十分考えられます。機会があれば他の学校もご紹介したいと考えております。