ディープシークCEO、数学オタクから世界的破壊者にPhoto:Bloomberg/gettyimages

 彼を中国のサム・アルトマンと呼ぶ人もいる。

 クオンツ運用の先駆者ジム・シモンズ氏に例える人もいる。

 梁文鋒氏はこの2人の革新者と多くの共通点があり、その影響力はいずれ2人に並ぶかもしれない。

 梁氏率いる中国のディープシークが開発した人工知能(AI)モデルは世界を驚かせ、性能と人気の両方で世界のトップ10に躍り出た。同社は米国で入手できるものより低性能のチップでこれを実現し、シリコンバレーのテック企業幹部やワシントンの政治家、世界の投資家に衝撃を与えた。

 シモンズ氏と同様、梁氏も投資の虫に取りつかれた数学オタクだ。膨大な市場データをコンピューターで分析することで、隠れたパターンを発見でき、利益への道が開けることに気づいた。同氏のヘッジファンド「ハイフライヤー」は約80億ドル(約1兆2400億円)を運用しており、中国で指折りのクオンツ運用ファンドとなった。

 同僚によれば、梁氏は富や名声に溺れるタイプではないが、米国主導のテック業界から尊敬されたいと語ったことがある。

 今や梁氏はそれを手にしたと言っても過言ではないだろう。

 1985年生まれの梁氏は、中国南部の港湾都市、広東省湛江で育った。学業優秀で、中学生になると独学で微積分を学び、名門の浙江大学に進学した。

 学生時代に株式銘柄を選別するAIアルゴリズムを書き始めた。卒業から数年後の2013年に投資会社ヤコビを立ち上げた。ドイツの数学者カール・ヤコビ氏にちなんだ社名だ。15年に大学時代の友人2人とハイフライヤーを創業した。