給与明細書 介護保険料 社会保険料 お給料 月給 賃金写真はイメージです Photo:PIXTA

「106万円の壁」撤廃によって、企業や従業員に大きな影響が出ることが懸念される。年金博士ことブレイン社会保険労務士法人代表の北村庄吾さんは「中小企業にとっては、踏んだり蹴ったり」と憤る。壁の撤廃によって、企業と従業員はどのくらい損するのだろうか。北村さんに試算してもらった。(取材・文/ジャーナリスト 村田くみ)

「106万円の壁」撤廃
中小企業の倒産が増える!?

「アルバイトの募集をかけても、まったく応募がない状態が数年続いています。慢性的な人手不足なので、お客さんが入りすぎると厨房や配膳がまわらなくなるので、『満席です』と言ってお断りするときがあります。経営的にも不効率なのですが、どうしようもない状態です」

 そうため息をつくのは、都内で居酒屋を営む30代の男性。

 コロナが明けて街に賑わいが戻ってきたのはいいが、売り上げはコロナ前には戻らない。24年はなんとか黒字をキープできたが、25年以降は「どうなるかまったくわからない」と店主は言う。人手不足で売り上げが伸びないところに、追い打ちをかけかねないのが将来的に撤廃される「106万円の壁」だ。

 社会保険の壁である「106万円」は、会社員らの配偶者である「第3号被保険者」がパートなどで、従業員51人以上の企業で週20時間以上働き、年収106万円を超えると、厚生年金への加入が義務付けられるものだ。

 会社員の配偶者たちが厚生年金に加入すれば、将来に受け取る年金が増える。一方、保険料の支払いが新たに生じて現在の手取り収入が減る。このため収入が106万円を超えないよう「働き控え」をする人が少なくない。

 そこで、厚労省は年収要件を撤廃し、週20時間以上働く人を厚生年金の加入対象にする案を1月24日に招集された通常国会に提出する「年金制度改革関連法案」に盛り込み、早期の実現を目指す。

 社会保険労務士の北村庄吾さんは、懸念点について次のように話す。