ドイツ西部のこの都市にある製油所で実験室の化学者として働くシュテファン・ディートさん(58)は20年間、共産主義をルーツとする極左政党の党員だった。今月実施される総選挙では極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に投票するという。「ここにはもはやドイツではなくなった場所がある。欧州ですらない。中東かアフリカだ」。スポーツ選手のような体格で、入れ墨を多く入れているディートさんはそう話す。「AfDの経済政策に目を通したことはないし、気にもしていない。それでも投票で支持する。移民のせいだ」世論調査によると、AfDは今回の選挙で得票率を2倍以上に伸ばし、12年前の発足以来、国政選挙で最高の結果を残す可能性がある。背景にあるのは、ドイツの景気低迷や移民問題、犯罪などに対する国内の不満だ。一部の世論調査専門家はAfDには選挙で第1党の座を獲得するチャンスもあるとみているが、たとえ2番手に終わったとしても、AfDの躍進は極右政党を政権から排除してきたドイツでは地殻変動のように感じられるだろう。