マンションをはじめとした不動産物件の売却は、ごく一般の人には一生に1回あるかないかの出来事。ほとんどの人が初めてだから「プロ(不動産会社)にお任せ」となることが多いが、実のところ、どこに頼むかで、売却金額に大きな違いが出るという。売却の専門家・風戸裕樹氏に、思いどおりに高く売るためのコツを聞いた。 

マンション売却の好機が到来

風戸裕樹氏不動産仲介透明化フォーラム
代表取締役
風戸裕樹氏(かざと・ひろき)
大学卒業後、2004年、オークラヤ住宅に入社、主に売却側に立つ仲介業務を経験した後、不動産ファンドで、ビル、マンション、土地の価格評価と売買の経験を積む。10年、消費者に不利にならない不動産取引を実現するために、不動産仲介透明化フォーラムを設立。売却専門サイト「売却のミカタ」(http://www.urinushi-no-mikata.com)を展開。正しい売却プロセスと売却手法の実行で、相場より10%以上高い売却実績を実現している。近著に『マンションを相場より高く売る方法』(ファーストプレス)がある。

「消費者の購買マインドが上向き、新築物件も増えてきました。こういうときには中古物件の需要も増えます。売却を考えている人にはチャンスです」

 こう語るのは不動産仲介透明化フォーラム代表の風戸裕樹氏だ。ここ1年ずっと動かなかった物件が、同じ価格をつけながら売れている。「物件価格が特に高かった2007年から09年の分譲物件でも、売るチャンス(=ローンの残債を消すくらいの金額で売却できる)が出てきました」(風戸氏)という。

 しかし油断は禁物。マンション売却の好機が到来しているといっても、誰もがその恩恵にあずかれるわけではない。

 不動産取引は長らくブラックボックスに覆われてきた。インターネットを通じて物件情報にアクセスできる機会が増えたとはいえ、物件情報の公開は今も仲介業者が圧倒的に支配している。「両手取引」(売り手と買い手の双方から手数料をとる)という業界の慣行も、売り手にとっては不利益に働きがちだ。

 またマンション売却の場合、どの仲介会社を選ぶかで、成約金額に1割程度の違いが出ることはざらだという。「日常の買い物であれば、1割程度の差はがまんできるかもしれません。しかし1回の取引が2000万円、3000万円になる不動産の場合、200万円、300万円の違いになります」(風戸氏)。

 だが、一般の人にとっては、マンションの売却は一生に何度も経験することではなく、ほとんどが買い替えを伴うものであることが多い。どうしても「買い物」のほうに気が向かうため、「売り」には多少は目をつぶってでも、売却できればそれでいい、と思うようになる。

 そうした世の流れの中で、売却専門の不動産仲介透明化フォーラムは、10年の設立以来、1000件以上の売却アドバイスを行い、300件超の売却案件を受託、相場より平均1割強高い成約実績を上げてきた。売り手のために風戸氏がこれまで実践してきたこと、アドバイスしてきたことをもとに、思いどおりに「売る」ための秘訣を考えていこう。