「コスパが悪い人には、共通点があります」
そう語るのは、大手レコード会社に15年勤めてヒットメーカーとして名を馳せた後、多拠点ライフや海外移住、グローバルノマドやミニマル仕事術など、新しい働き方を牽引してきた、四角大輔氏。コスパ思考=ケチではありません! 人生のリソースを最大化する「一点集中」の極意について語っていただきました。
本記事では、四角氏の書籍で、多くの読者にワークシフトを促した人生戦略シリーズ本――『超ミニマル主義』と『超ミニマル・ライフ』――の内容をもとに「コスパ最強の人が必ずやっている習慣」について解説する。

「コスパが悪い人」はお金よりも○○を無駄にしている――その決定的な理由
――四角さんが言う「コスパが悪い人」とは、どんな人のことを指すのですか?
四角大輔(以下、四角)
多くの人が「コスト=お金」と考え、「コスパ=費用対効果」ととらえがちですが、欧米のビジネスシーンでは「お金」よりむしろ、「エネルギー(手間・労力・気力)」と「時間」というコストを重要視します。
ところが日本企業は、「気合いや根性」「おもてなしや思いやり」といった日本古来の精神論や美意識を盾に、従業員の貴重な「エネルギー・時間」を「コスト換算」せず、無制限に搾取してきた。
その結果、日本の職場には、「がんばれば何とかなる」「長時間働けば出世できる」という、呪いのような思い込みが根強く残ってしまいました。
残業する人、倒れるまで働く人は「エライ」と評価されてきましたが、同じ業務を定時までに終わらせる人と、フラフラになって夜までかかる人、どちらが優秀でしょうか?
本当に大切なのは、「コスパ(=コストパフォーマンス)」――つまり、投入した「エネルギー・時間コスト」に対して、どれだけ価値ある「パフォーマンス」を出せるかですよね。
――仕事における「コスパが悪い人」の共通点とか、あるのでしょうか?
四角
ベストセラー作家の橘玲さんは、最新刊『親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの?――人生という「リアルなゲーム」の攻略法』(筑摩書房)で、興味深い「コスパ論」を展開しています。
「もっともコスパが悪いのは、ウソをついたり、だましたりする人」
「次にコスパが悪いのは、約束を守れない人」と。
これら倫理的な規範を「コスパ」という観点から捉え直すと、より腑に落ちますよね。
「ウソをつき、だます人」「約束を守れない人」は、同僚や組織の「エネルギー・時間コスト」を奪って疲弊させるだけでなく――なによりも、当人を激しく消耗させます。これは、ビジネスにとって「コスパ」が悪すぎます。
しかし、私が約30年のビジネス経験から見てきた「コスパが悪い人」の本当の共通点は、意外にも生活における「お金の使い方」なんです。
ブラックフライデー期間に購入されるモノの8割が廃棄される
――そうなんですね。「お金の使い方」における「コスパの悪さ」について、もう少し説明していただいてもいいですか?
端的に言うと、仕事ではなく、日々の暮らしの「お金の無駄遣い」のことです。
現代の広告資本主義は、「安い!」「欲しい!」と、不要な商品を衝動的に買わせることで回っています。ブラックフライデーで購入される商品の多くが使用されず(*1)、8割が結局廃棄される(*2)というリサーチがあるくらいです。
日々の生活で、数値化できる「お金」のコスパを意識できない人が――数値化できない「手間・労力・気力」という――自分や同僚の限りある「エネルギー」のコスパを、職場で意識できるはずがないのです。
「お金のコスパ」を極めた人だけが、「時間のコスパ」でも成功する理由
――「エネルギー」のコスパ意識の難しさは理解できましたが、もうひとつの重要な要素である「時間」に関してはどうですか?
時計で「1時間」と数値化されても、人によって主観的な長さや重みが全然違いますよね。
ちなみに「お金」は、「時間」と同じく数値化できますが、元々は「紙幣・硬貨」です。実体ある「紙幣・硬貨」とは違い、質量がなく概念でしかない「時間」では、リアルな身体感覚は得られません。
そして、「エネルギー(「手間・労力・気力)」というコストは、数値化できないとはいえ、確かな身体感覚が伴います。だから「時間」が、もっともやっかいなコストなのです。
仕事でいい成果を出すためのトレーニングとして、まずは日々の生活で「余計なモノ・サービス」に手を出さないよう、「お金」のコスパ意識を極限まで高めてください。
興味深いことに、あのアップルCEOのティム・クックと、日本でカリスマ的な存在の20代ミニマリストが同じことを述べています。
――つまり、「お金」がもっとも容易で、次に「エネルギー」、そして「時間」の順でコスパを高めるのが難しいということですね。
そうです。
日々の「お金」の次は、仕事において――あなたの「エネルギー(手間・労力・気力)」を著しく奪っていると体感する――「業務・アポ・人間関係」を洗い出してください。
それら「余計な業務・アポ・人間関係」をひとつずつ手放すごとに、もっとも難しい「時間」のコスパが、自動的に高まっていくのです。
ここで強調したいのは、「コスパ思考=ケチ」ではないということ。
大切なのは「メリハリ」と「一点集中」。限りあるリソース――「お金」「エネルギー」「時間」――を、本当に大切なことに思い切って投資し、どうでもいいことには一切浪費しない。これが真の「コスパ思考」なんです。
――『超ミニマル主義』と『超ミニマル・ライフ』には、その方法が詳しく書かれているのですね。
ぼくが暮らすニュージーランドや北欧と違い、日本では「お金には限りがあるが、時間やエネルギーは無尽蔵にある」――つまり「いくらでも奉仕すべきであり、奉仕されるもの」――という間違った思い込みで働き、心身を壊す人、命を失う人が後を絶ちません。
この社会課題を解決したくて、この2冊では、「エネルギー」と「時間」のコスパを極限まで高める具体的な技法を体系化しました。『超ミニマル主義』のSTEP1~7、『超ミニマル・ライフ』のSTEP1~7を順番に読むだけで誰でも即実践できるよう、4年かけてまとめました。
最後に。
増やすことができる「お金」と違い、「時間」は決して増やすことはできません――「1日25時間ある」なんて人はいないのですから(笑)。
さらに言うなら、寿命ある我々にとって「時間=命」です。もっとも大切にすべき「限りある資源=時間」を浪費することは、「命の無駄遣い」でしかないと知っておいてください。
(*1)https://moneyplusadvice.com/blog/tips-advice/black-friday-and-cyber-monday-2024-how-to-resist-temptation/
(*2)https://news.fmbusinessdaily.com/2024/11/black-fridays-hidden-cost-shocking-environmental-impacts-revealed-by-experts/