「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

「なぜ?」は最悪の質問
質問には、よい質問とよくない質問があります。
よくない質問の代表が「なぜ?」「どうして?」と聞く質問です。
では、それがよくないのはどうしてでしょうか。
まず第一に、相手の「思い込み」を引き出してしまい、それがコミュニケーションのねじれにつながるからでした(前回記事)。
では次に、第二の弊害に迫るために、もう一つ、短い会話を見てみましょう。小学校高学年のT君とお母さんとのやりとりです。
母親と子どもの会話
家の中で母親とT君が話をしています。
母親 ゲーム、また出しっぱなしじゃないの。どうして使ったらすぐに片付けないの?
T君 いや、だからM君と遊んでから片付けようと思ってたら、Yちゃんから連絡が入ってきて、そのうちお昼になっちゃったんだもん!
母親 もう! 言い訳はいいからさっさと片づけなさいっ!
どこにでもありそうな親子のやり取りですね。
ここで着目してほしいのが、太字の「どうして~」の部分です。Side1では、T君は、いきなり言い訳を始めたわけではありません。お母さんから「どうして?」と聞かれたので、それに答えようとしただけです。ところが、それが言い訳がましくなってしまい、それをさらに怒られてしまいました。T君の立場はありませんよね。
では、もうひとつのやり取りを見てみましょう。
母親 ゲーム、また出てる。いつ出したの?
T君 あ、それ朝出したの。
母親 そう。
T君 ……今しまうね!
やけにあっさりと片付けてくれましたね。
では、この2つの違いはどこから生じたのでしょうか。
「なぜ」は相手に言い訳を“言わせる”
Side2では、T君は言い訳せず、すぐにゲーム機を片付け始めました。Side1の質問とSide2の質問、違いがどこにあるか、もうおわかりになりましたね。
「なぜ質問」が悪い第二の理由は、上の例が示すように、最悪の答え、つまり「言い訳」を引き出すからです。
私たち人間は、自分でも「よくなかったかなあ」と思っている行為に対して、「なぜ? どうして?」と聞かれたら、とっさに言い訳してしまうようにできています。
先ほどのSide1の会話例では、T君はお母さんに「言い訳を言わされた」状況なのです。
一度きりならまだしも、こういうことが繰り返されたとして、T君とお母さんとのコミュニケーションは、果たしてよい方向に向かうでしょうか。これから、何でも素直に打ち明けられる関係が築かれていくでしょうか。大いに疑問です。
つまり、「どうして?」と人に聞くのは、相手に言い訳を言わせてしまう「悪い質問」になる可能性が高いのです。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』の一部を抜粋・調整・加筆した原稿です)