純米大吟醸の日本酒「獺祭」を世界的なブランドに育てあげた旭酒造。食品業界で日本一の給料を支給しようとしているが、完全な成果主義のような弱肉強食の制度は採り入れないという。日本の組織には、なぜ“緩さ”が必要なのか。桜井博志会長に、仕事ができない人の特徴と人事で大切にすべきことを語ってもらった。(旭酒造代表取締役会長 桜井博志、構成/石井謙一郎)

トライ&エラーが大切
準備に時間をかけすぎるタイプはダメ
私が常々「トライ&エラーが大切だ」と口にするのは、この社会が今後どうなるか、自分の会社をどうしたらいいのか、答えのわからない時代だからです。何事も最初からは上手くいかないのは、織り込み済みなのです。
獺祭が失敗の歴史の中にあることを私たちは理解しているし、失敗を恥とせず、隠そうともしません。そこに強みがある、と考えています。
社員たちを見ていて、有能そうでも自分の殻から出ようとしない「怪我を恐がる人」はダメです。そういうタイプがリーダーになったら部下はついてきませんから、失敗を恐れず、小さくまとまらない社員を育てたいと思っています。
質が悪いのは、準備に時間をかけすぎるタイプです。そのせいで機を逸すると、出来ない理由をたくさん口にします。やっとこさ取り掛かったかと思えば、状況が変わろうとも絶対に方向転換しない。これが最悪です。ところがこういう人のほうが、弁は立つし、頭がよく見えるものなのです。