「指示待ち部下」を生む上司と「自走する部下」をつくる上司の明確な違いPhoto by Shogo Murakami

純米大吟醸の日本酒「獺祭」を世界的なブランドに育てあげた旭酒造。2028年に完成予定の3号蔵では、4万円弱する超高級酒のみ製造を予定する。さまざまな改革を進める桜井博志会長に、リーダーシップと大胆な若手の育成方法について語ってもらった。(旭酒造代表取締役会長 桜井博志/構成 石井謙一郎)【インタビュー連載全4回の第2回】

若手の登竜門制度が
組織改革のきっかけになった

 私どもの一番の弱みは、酒蔵としては組織が大きくなったことです。以前は、製造部長の下に製造担当者がいて、その下に大勢のスタッフがいました。これでは問題だと考え、A、B、Cの3チームに分けました。競い合いつつ情報共有もできますが、それでも現場のリーダーはたった3人だけ。他の多くのスタッフがその指令下にあるのは、幸せな姿だと思えません。

 そこで、2人組のチームを10くらい作り、一度に20~30人のリーダーを育てようと考えました。この春に着工して2028年に完成を予定している獺祭の3号蔵では、酒造りの工程ごとに分業するのではなく、最初から最後の仕上げまで、この2人だけのチームで一貫して手掛ける仕組みにします。流れ作業では本当にいい酒はできないし、自分で自分のこととして仕事を捉えてほしいからです。

 実はすでに、入社3年目~6年目の若い社員が自ら手を挙げて、2人だけで最初から最後まで酒造りを行なう「登竜門」という制度があります。入社3~4年目の連中が酒を1本丸々仕込むなんて、杜氏(とうじ)が仕切っている普通の酒蔵ならあり得ません。ところが、目隠しテストに出したら「天才杜氏が現れた」と言われるであろうレベルの酒を、彼らは造ってしまいます。

 逆に、「入社3年目で立派な酒を造れない酒蔵って何だろう」と思ったりもします。教育システムがおかしいんじゃないか。寿司屋さんなんか、シャリを握るまで修業に10年とかいうでしょう。イジメですよ。