「売るべきか、持ち続けるべきか」――株を買った瞬間から、この問いが頭を離れない。含み益が出ていると、「もう少し上がるかもしれない」と欲が出る。だが、欲張りすぎてタイミングを逃せば、利益は一瞬で消え去る。逆に、含み損が膨らむと、「ここで売ったら負けだ」と意地を張る。ズルズルと持ち続け、気づけば取り返しがつかない状況に陥ることも。
利益を出せる投資家は迷わない。売り時の基準を持ち、迷いなく行動している。では、その基準とは何なのか? 話題の新刊『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』では、YouTubeで株式投資のアドバイスを配信し人気を博す栫井駿介氏が「利益を出せる個人投資家の思考法」をわかりやすく解説する。本書には、株の売り時を正しく判断するためのヒントが詰まっている。この記事では、特別に本書の一部を公開する。

「買ったら、放ったらかし」では勝てない
投資では「損小利大」が良いとされます。損が出ていたらさっさと損切りし、逆に利益はどんどん伸ばすことが必要です。
利益の出ている銘柄をそのまま伸ばし続けるとなると、「だったら放ったらかしでいいのか?」という話になります。
それは半分正解、半分誤りと言いましょうか。
伸びている銘柄をできるだけ伸ばすのは、感覚的には正解です。一方で、「手入れ」はどうしても必要になると感じます。
例えば、一時期株式市場を賑わせたエムスリー(証券コード:2413)のケースを見てみましょう。
医療情報のポータルサイトを運営する企業ですが、世界的コンサルティング会社・マッキンゼー出身のCEOが率い、業績をグングン伸ばして、それに伴い株価も急上昇しました。
特に、コロナ禍では医療関係ということや空前の株式投資ブームに支えられて急上昇、コロナ前と比較して株価は一時3~4倍になりました。
しかし、その後はコロナ禍と株式投資ブームの終焉、さらには成長率の鈍化などから、株価は下落を始めます。
PERも一時100倍以上になっていたことから、割高感の修正が起きたのです。
結果として、2024年末の株価はコロナ禍を大幅に下回る水準にまで下落しています。

こうなるとやはり「売っておけばよかった」ということになりますよね。
急上昇した銘柄ほど、下落した途端一気に投資家が離れていく
伸びている銘柄であっても、「手入れ」は必要になるものです。
上昇を続けているうちは放ったらかしでよいのですが、行き過ぎた株価はやがて下がります。
そのため、上昇している姿を眺めながらも「割高感」「株価の勢い」「事業の状況」には気をつけていないと、やがて大きく下がることもあるのです。
利益が一時的に減少するなどの「異常値」でない限り、PER100倍を超えるようだと割高なケースがほとんどです。
そうなった時には、一部だけでも売っておくことが得策かもしれません。
どんなに素晴らしい企業であろうと、年率30%以上の高成長を続けられることはほとんどありません。
急成長企業の成長率が下がってきた時は、多くの投資家が離れてしまいます。
売るべきサインは、株価と業績、両方に表れるのです。
長期投資に向いている銘柄とは?
理想的なのは、業績と株価がほどよく伸び続ける銘柄でしょう。
このような企業なら、必要以上に割高になることもなく、ただ持ち続けるだけで資産が増えていきます。
(本記事は『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』の一部を抜粋・編集したものです)