「買った途端に株価が下がる」「売った途端に上がる」――なぜこんなことが起こるのか?
値下がりに焦って売ったら、その後じわじわと回復し「もう少し待てばよかった…」と後悔する。逆に、損を確定させるのが怖くて持ち続けたら、含み損が膨らみ、どうにも動けなくなる。株価の上下に振り回されずに利益を出せる人は、どのように考え、どう行動しているのか?
話題の新刊『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』では、YouTubeで株式投資のアドバイスを配信し人気を博す栫井駿介氏が「利益を出せる個人投資家の思考法」をわかりやすく解説する。株価変動に惑わされず、安定して利益を狙うためのヒントが満載だ。この記事では、本書の一部を特別に公開する。

儲ける人と損が膨らむ人、根本的な考え方の違い
投資と切り離せない行動経済学の理論に「プロスペクト理論」というものがあります。
行動経済学とは、必ずしも合理的ではない人間行動の傾向を観察し、心理的な洞察を加えようとする試みです。
プロスペクト理論は2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンらによって提唱されました。
なぜそれが重要なのかと言えば、投資を始めたばかりの初心者は、人間が本来持っている傾向によって「自動的に」動いてしまい、それが投資の成功を妨げていることがとても多いからです。
投資では「損小利大」が良いとされます。これは当たり前といえば当たり前の話で、損(マイナス)と利(プラス)を合計した時に、利の方が大きくならなければトータルでプラスにはなりません。
つまり、損が出ていたらさっさと損切りし、逆に利益はどんどん伸ばすことが本来必要なのです。
しかし、プロスペクト理論によると、人が感じる損失の痛みは利益が出た喜びの2倍だと言います。
損を最も実感するのは、実際に売って損失を確定させた時ですから、その痛みを回避しようと、損切りはどんどん遅くなるのです。
同時に、「もう少し待てば回復するかもしれない」という希望的観測が生まれやすくなります。
逆に、含み益が出ていると人はリスク回避的になり、早々に手仕舞いしてしまいがちです。
そこから先の追加的な利益に対しても「不感症」になってしまうため、もっと利益を出したいという気持ちは薄れます。
その結果、小さな利益を出せたことでほっとしてしまうのです。
(本記事は『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』の一部を抜粋・編集したものです)