アメリカでベストセラーとなり、多くの絶賛の声を集めた『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』がついに日本に上陸した。著者のブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者。この本が指摘するのは、人生を消耗させる「思考の癖」だ。本稿では本書の内容をベースに、「すぐカッとなる人」と「冷静な人」の習慣の違いをひも解き、感情に流されずに行動するための具体的な方法を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「すぐカッとなる人」と「冷静な人」の決定的な習慣の違いPhoto: Adobe Stock

「反応している時間」を減らす

 ウェルビーイング研究の第一人者であるスタルバーグは、本書の中で、私たちが活動している時間を2つに分けて議論している。

反応している時間」と「意図的に行動している時間」だ。

 そして、精神的な健康のためには、「反応する時間」を減らし、「意図的に行動する時間」を増やすことが重要だと主張している。

反応とは、よく考えもせずについ早まって出てしまう行動だ。反応すると、型どおりの行動に出やすい。

他方で、自発的な対応は計算したうえで意図的に行動することだ。

──『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より

 感情が高ぶると、人は考える前に反応してしまう。これは本能的なものであり、誰にでも起こりうる。

 しかし、冷静な人はこの「反応する時間」を最小限に抑え、「意図的に行動する時間」を増やす習慣を持っている。

感情に名前を付ける

 では、どうすれば反応を抑え、冷静に対応できるのか。

 その方法の一つとして、本書では「感情ラベリング」が紹介されている。

一瞬、間をおくことは誰にでもできる。だが、感情が高ぶっている時は、感情に飲み込まれて、瞬く間に反応のスパイラルに巻き込まれがちだ。

特に難しい状況をきちんと整理するには時間と距離が必要だ。そのためには自分の感情に名前をつけることをお勧めする。

──『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より

「感情ラベリング」とは、自分の感情を言葉にすることで、冷静な判断を取り戻す方法だ。

「いらだっている」「不安だ」といった具合に、自分の感情を明確に認識するだけで、感情に流されにくくなる。

 では、なぜラベリングが有効なのか?

感情をラベリングする行為は、刺激を受けてから対応するまでの間に距離を作り出してくれるのだ。

──『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より

 人は感情的になると、目の前の状況に没頭しすぎてしまう。

 しかし、ラベリングによって、自分の感情を客観視することができる。

ラベルを貼れば、感情から自分を切り離せる。

ただそれを経験するのではなく、自分はこんなことを経験しているのだとわかる──この行為はメタ認知と呼ばれている。

こうして一歩距離をおいて物事を認知すると、余裕を持って起きていることを整理できる。

──『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より

 このように、「感情ラベリング」を行うことで、感情に振り回されるのではなく、意図的な行動を選択しやすくなる。すぐにカッとなる人と、そうならない人の違いは、こうした小さな習慣の積み重ねによるものだ。

 日々の生活の中で、もし感情が高ぶったと感じたら、「自分は今、どんな感情を抱いているのか?」と問いかけ、言葉にしてみよう。

 本書では、この他にも日常生活の中でより良い選択をするための実践的なヒントが数多く紹介されている。

※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』の内容を一部抜粋し、編集を加えたものです。