アメリカでベストセラーとなり、多くの絶賛の声を集めた『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』がついに日本に上陸した。著者のブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者。変化の激しい時代を生き抜くために、必要なのは「適応力」だと言われる。しかし、私たちはしばしば思考のクセに縛られ、知らぬ間に自分の可能性を狭めてしまっている。本書は、そんな思考の硬直を解きほぐし、柔軟な視点を持つためのヒントを与えてくれる。この記事では、そのエッセンスを紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「どっちが正しいか?」と考えると視野が狭くなる
日々の生活の中で、私たちは多くの選択を迫られる。ビジネスから家庭の問題に至るまで、「AかBか」という二者択一の問いに直面することは少なくない。
全米ベストセラーの話題作『Master of Change 変わりつづける人』は、このような単純化された思考にはリスクがあると指摘する。
視野が狭まり、問題の本質を見失ってしまうことがあるのだ。
世の中には白黒はっきりしているものがあるが、多くのものは白でもあり黒でもある。哲学者たちは、こうした考え方を「非二元論」と呼ぶ。
世の中は複雑でそれぞれに異なる背景があり、真実はしばしば逆説や矛盾の中で見つかる。「これかあれのいずれか」ではなく、「これでもあり、あれでもある」ということだ。
──『Master of Change 変わりつづける人』より
本書は、思考のあり方を根本から問い直すヒントを与えてくれる。
日常の判断において、「正しいか、間違っているか」「成功か、失敗か」といった二項対立の枠組みで物事を捉えがちだ。
しかし、実際の世界はそれほど単純ではなく、多くの事柄はグレーゾーンの中に存在する。
例えば、「計画」と「柔軟性」は対立しがちな概念だ。
綿密な計画を立てることで効率的に物事を進められるが、計画に固執しすぎると予期せぬ変化に対応できなくなる。
一方で柔軟性を重視しすぎると、方向性を見失い、行き当たりばったりになりかねない。
計画をベースにしつつ、状況に応じて柔軟に対応することで、よりよい結果を生み出せる。
核となる価値観を明確に。それ以外は変化を受け入れる
柔軟な思考を鍛えるために大切なのは、すべての意見を受け入れることではない。
本書では「自分の核となる価値観を明確にし、それを基準にしながらも変化を恐れないこと」が重要だと述べられている。
具体的には、次の3つのことを意識するとよい。
・自分にとって譲れない価値観を整理し、言語化する
・価値観に沿って判断しながらも、新しい情報や考え方を取り入れる
・変化する環境に適応する柔軟性を持つが、根幹はブレないようにする
例えば「誠実であること」を価値観として大切にしている人は、どんな状況でも他人に対して誠実であろうとするだろう。
しかし、人との関わり方は時代や環境によって変わる。直接会って話すことが重要だった時代もあれば、オンラインでのやり取りが主流になることもある。
誠実さという軸を守りつつ、コミュニケーションの方法を柔軟に変えることで、よりよい人間関係を築ける。
適応力が高い人の生き方とは?
私たちはつい「絶対的な正解」を求めがちだが、世の中には明確な答えのない問題が数多く存在する。
そのときに必要なのは、「すべてを変える」か「何も変えない」かの極端な選択ではなく、「核となるものを守りつつ、それ以外は適応する」というバランス感覚だ。
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人』より一部を抜粋・編集して構成しました。