日本の石炭はどこから? ぶっちぎり1位の「意外な国」とは?
「経済とは、土地と資源の奪い合いである」
ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事、そしてトランプ大統領再選。激動する世界情勢を生き抜くヒントは「地理」にあります。地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
本連載は、「地理」というレンズを通して、世界の「今」と「未来」を解説するものです。経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの地理講師の宮路秀作氏。「東大地理」「共通テスト地理探究」など、代ゼミで開講されるすべての地理講座を担当する「代ゼミの地理の顔」。近刊『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』の著者でもある。

日本の石炭はどこから? ぶっちぎり1位の「意外な国」とは?Photo: Adobe Stock

日本のエネルギー問題を考える

「いかに軍備を整えようとも、食料とエネルギーが途絶えれば国家は一瞬で瓦解する」

 国家にとっての安全保障を考えるうえで、最も重要なのは食料とエネルギーではないでしょうか。日本はこれらの多くを輸入に依存しています。輸入先との関係性だけでなく、世界情勢の変化を受け、資源の輸送ルートの安全確保が日本経済にとって重要な課題となっています。その日本が、各種資源をどこから輸入しているのかご存じでしょうか?

石炭:頼りはオーストラリア

 石炭は、特にオーストラリアからの輸入が多い資源であり、以下インドネシア、カナダ、アメリカ合衆国、ロシア、南アフリカ共和国、コロンビアと続きます。

 日本はオーストラリアから64.2%(2023年)の石炭を輸入しており、オーストラリアの東部に位置するグレートディヴァイディング山脈に広がるモウラ炭田などが主要な供給源です。近年はインドネシアからの石炭の輸入が増えています。1990年に93万5000トンだった輸入量は2023年には2587万9000トンにまで増加しています。

 日本では、石炭は安定供給と経済性を支える重要な資源として活用されています。最新の石炭火力発電所では「クリーンコール技術」を活用し、大気汚染物質を大幅に削減しています。

(本原稿は『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』を一部抜粋・編集したものです)