尾道市で畑仕事をしながら一人で暮らす哲代おばあちゃんは102歳。「中国新聞」に密着記事が連載されると、「こんなかわいいおばあちゃんになりたい!」と注目度が一気に急上昇した。自分らしくゴキゲンに老いるためのヒントとは。本稿は、石井哲代・中国新聞社『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』(文藝春秋)の一部を抜粋・編集したものです。
ふさぐ日はあるが嘆いてもしょうがない
自分を励ます名人になって心をご機嫌に
はじめまして。ただいま102歳、石井哲代と申します。100歳なんて、子どもの頃はおとぎ話に出てくるおばあさんのことだと思っていたのに、自分がその年を超えたということに驚いております。
朝から畑に出てしっかり体を動かして、お昼をいただいてからくーっと一眠りします。昼寝から覚めたときは本当に気持ちいいです。一人暮らしですけえな。誰にも気兼ねせず、のんきなものです。夜、眠れますかとよう聞かれますが、心配には及びません。床に就けばストン、グーなんでございます。
広島県尾道市の山あいの町で暮らしています。26歳で嫁いで参りました。家の田んぼを手伝いながら、56歳まで小学校の先生をしておりました。子どもは授かりませんでしたので、20年前に夫が亡くなってからはずーっと一人暮らしです。小さな畑の守りをしながら、ご近所さんとのおしゃべりに精を出す日々でございます。
農具をかついでゴキゲンに笑う石井哲代さん102歳 写真:中国新聞社
そんな毎日が、ちいとせわしなくなったのは100歳になってから。地元の中国新聞で、私の日常が連載記事で紹介されるようになりました。畑の大根がええ出来じゃとか、正月に雑煮の餅を3個食べたとか、まあ何でもないことばかり書いてるんでございます。それが感想や励ましのお手紙がたくさん届くようになって。そりゃあうれしかったんです。
そうしたらさらに驚くことに、本にしてくださるというんです。わおー、わおーでございます。天に昇るというか、降りるというか。この年で生きとるだけでも幸せなのに、まあどうしましょう。
老いるとできないことは増えるし、心がふさぐ日もあります。でもね、嘆いてもしょうがない。私は自分を励ます名人になって、心をご機嫌にしておくんです。人を変えることはできませんが、自分のことは操作できますけえな。そんなおばあさんのひとり言を集めたような本でございます。あの世で夫も大笑いして読んでくれとることでしょう。
わおわお!さらにさらに驚くことが起きました。2021年3月15日、尾道市の教育委員会が開催した「100歳を生きる智恵」講演会の講師に招かれたのです。
控室では少しドキドキしましたが、いざ本番になると緊張も吹き飛びました。
講演は「瀬戸の花嫁」の大合唱でスタート。「皆さん、大きい声で歌うてくれますか」と声をかけ、大きな紙に書いた歌詞カードを掲げ、大正琴で伴奏しました。
それにしても、講演なんてえらそげですな。えっちらおっちら生きとるおばあさんのありのまんまをお話しするだけです。どうすりゃあ毎日自分を楽しませながら上手に生きていけるか。それしかありません。講演でも少しお話しさせてもろうたのは次の5つのことです。
「こうして100年生きてきました」
毎日が楽しくなる5つの法則
1・物事は表裏一体。良いほうに考える
物事には必ず表と裏があります。ほら、おばあさんの手を見てごらんなさい。手の甲はしわしわですが、ひっくり返せばつるつるです。一方向から見るだけでは分かりません。
例えば受験に失敗して本命じゃない学校に行ったとしても、そこで生涯の友に出会えるかもしれんでしょう。失敗もひっくり返して、良いほうに考えるんです。失敗にとらわれてばかりじゃ劣等感に包まれて人生が曲がってしまう。人間がこもう(小さく)なってしまいます。失敗は通過点で、いくらでもやり直せる。あれは成功じゃったと思える日がきっときます。
2・喜びの表現は大きく
うれしいな、ありがとうという気持ちを相手に伝えようと思えば自然にオーバーアクションになります。普段、姪の直ちゃんがおかずを差し入れてくれたり、ご近所さんがお掃除を手伝ってくれたりすることも多いんです。一人の寂しさを知ってるからでしょうかなあ。本当にありがたい。いつも「わおわお」って大喜びしています。
年寄りが機嫌を悪うして怒りっぽくなるのはいけんと思います。年寄りは若い人の見本にならんといけん。ああ、老いても楽しそうだなあって思ってもらえるよう、にこやかに。社会のムードメーカーっていうんでしょうか。同じ一生じゃから縮こまったりうつむいたりせず、伸びやかに過ごしたいです。







