精神科医・和田秀樹が「高齢者こそお金を使った方がいい」と断言する理由写真はイメージです Photo:PIXTA

人生100年時代がうたわれる一方で、老後資金に頭を抱える日本人は少なくない現状がある。だが、精神科医の和田秀樹氏は、「歳を重ねるほどお金を使った方がいい」と断言する。その本意について、和田氏の著書『90歳の幸福論』(扶桑社)より一部抜粋・編集してお送りする。

歳を重ねるほど
お金はいらなくなる

 自分が90代まで生きると考えたとき、多くの人が心配するのがお金と介護の問題についてでしょう。

「長生きした場合、老後資金は足りるのだろうか」
「自分が歳を取ったときにも年金が支払われるだろうか」
「老人ホームに入るお金はあるのか」
「90代まで働けず収入もないのに、どうやって生きていけばいいのか」

 そんな心配を抱える方は少なくないはずです。

 しかし、現代の高齢者は、お金については心配しすぎなくていいと私は思います。なぜなら、大前提として人間は年齢を重ねるほどにお金がかからなくなるからです。

 生活費にしても、よほどのインフレが起きない限り、食費や光熱費が急激に増えることはないでしょう。

 食欲も少なくなっていくので、高級フレンチをフルコースで食べたいという想いも減っていくし、外食や飲み会なども減っていきます。歳を取れば取るほどに体が動かなくなるので、広い家も必要なくなります。旅行にしても若いときのように「世界一周したい」などと思わなくなります。また、外見は以前よりも着飾らなくなるので、被服費なども減っていきます。

 家を買っていても、その頃にはローンも終わっているはずですし、子育ても終わっている人が大半でしょうから教育費もかかりません。

 70代、80代になると、年金暮らしなのに貯金が減らないという現象を肌身で感じる人も多くなるのではないでしょうか。ついでに言うと、パートナーが介護状態になったり、病気になったりしたら大金が必要と思う方がいるかもしれませんが、公的介護の制度や保険診療のおかげで贅沢な有料老人ホームや差額個室を求めない限り、年金の範囲でまかなえることが多いのです。

 死後の世界へお金は持って行けません。だから、必要な分だけあれば十分です。

 いまするべきことは、「こうなったらどうしよう」という不安を抱くのではなく、「実際にどのくらいのお金が老後になったら必要なのか」をきちんと考えておくことです。

 不安はその実態がわからないからこそ、余計に高まっていくものです。自分の老後にどのくらいのお金がかかるのかがわかり、足りない場合はどうやってカバーするべきかがわかっていれば、不安は減ります。