「とりあえずネットカフェに泊まろうと思ってあそこに行ったら、店長に『かわいいじゃん、いいバイトあるよ』って言われて、『明日からこの部屋タダでいいから』って。自分なんてどうでもいいやって思ってバイトしてた」

 そこから清実さんは香奈さんを抱きしめて「分かってあげられなくてごめんね」と泣いていました。

 香奈さんも「ごめんね、ごめんね」と泣いていました。

 きっかけはほんの小さなつまずきだったのでしょう。けれど、それをきっかけに滑り落ちていく場所が、この歌舞伎町には存在しているんだと思いました。

単なる家出やパパ活という言葉では
くくれない残酷な事実

 後日、清実さんから連絡がありました。

 私が送っていった翌日、新宿警察署で歌舞伎町のネットカフェであったことを香奈さんは全て話してきたそうです。

 以前から同様の申告や相談があったそうで、数日後に新宿区と警視庁は合同で歌舞伎町周辺の宿泊可能施設への立ち入り検査を実施したそうです。そしてネットカフェの店長も売春あっせんなどの容疑で逮捕されたそうです。

 香奈さんは落ち着きを取り戻して、知り合いの花屋さんで働き始めるそうです。

 今回の調査は単なる家出やパパ活という言葉ではくくれない残酷な事実です。

 手を差し伸べる人がいれば、どんな深い闇の中からでも抜け出せることを、香奈さんと清実さんが証明していくはずです。

 私たち探偵は手を差し伸べる人の手伝いしかできませんが、できるだけ多くの手伝いができるよう、全力で調査に臨みます。

「歌舞伎町に消えた娘の行方を追う探偵」。点と点が線になる探偵トークでした。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。