話の流れで、私は香奈さんを捜していることと、特徴をそれとなく伝えました。
すると、ナナミさんの目が一瞬動き、「あー、分かるかも」と、ある部屋番号を教えてくれました。
「でも、お兄さんその子の親じゃないんでしょ?仕事?まあいいや、見つかったら、どっか飲みに行こっか?」
その無邪気な笑顔の裏に、彼女が背負ってきたものを想像せずにはいられませんでした。
「ごめんね。見つけたらすぐに親御さんに知らせたいんだ」
そう答えると、ナナミさんは「ふーん、見つかるといいね」と笑いながら廊下の奥へと消えていきました。
ついに少女を発見
駆け付けた母は…
その後、共有スペースのソファでマンガを読むフリをしながら、教えてもらった番号の部屋を監視しました。20分ほどするとその部屋に、金髪に近い茶色の髪をして大人びた濃いアイメイクの女性が戻ってきました。
清実さんからもらった画像と比べるとまるで違っていましたが、目にはまだ子どもの面影が残っていて、紛れもなく香奈さんでした。
私はすぐ来てほしいと清実さんに連絡し監視を続けたところ、香奈さんはシャワールームに行き、共有スペースでフリードリンクとフリー軽食のカレーでおなかを満たした後、2回ほど個室ルームを行ったり来たりしました。
おそらくはナナミさんが教えてくれたパパ活をやっているようでした。
私の連絡から1時間半ほどして清実さんはネットカフェに到着しました。
私が座っているソファの隣に腰をかけた清実さんは「本当に香奈でしたか?人違いじゃないですか?香奈がパパ活なんて」と頭を抱えて今にも泣き出しそうでした。私もなんと声をかけてよいのか分かりませんでした。その直後に香奈さんの部屋の扉が開きました。
「香奈!」
香奈さんはとても驚いた表情のまま、すぐに部屋に閉じこもり内鍵をかけました。
「香奈!お母さんだよ、帰ろう。お願いだから!」
清実さんの呼びかけに扉の向こうで、一瞬物音が止まった気がしました。しかし扉は開かず、香奈さんは中に閉じこもったままでした。