トランプ大統領Photo:Win McNamee/gettyimages

日本の単独交渉主義は正しい戦略か
米国のリショアリング戦略にどう対応

 トランプ政権が打ち出した関税引き上げ政策の見直し交渉で、赤沢経済再生相は今週末も、4週連続で訪米しアメリカ側との6回目の交渉に当たるという。

 再選されたトランプ政権は、相互関税のほか、鉄鋼・アルミニウム、自動車などの個別品目に高関税を課す強硬政策を推進している。この政策は、海外からの輸入を抑制し、アメリカ国内への「リショアリング」(生産回帰)を目的とするものだ。

 この見直しを求めて、日本だけでなくEUや中国、他のアジア諸国など多くの国がアメリカと協議中だ。

 この状況において、海外の鉄鋼や自動車などの企業が直面するのが、まさに「囚人のジレンマ」のような難しい状況だ。

 つまり各国の政府や企業が協力してリショアリングに応じなければ、関税賦課によってアメリカ国内の価格が高騰するので、アメリカは高関税政策を維持できなくなる可能性がある。

 しかし、個別企業が「抜け駆け」的にアメリカ進出を行えば、その企業だけが関税回避と市場シェア拡大という利益を得ることができる。

 この構造が協力の失敗を招き、トランプ政権が意図するリショアリングを促進してしまう。