
トランプ関税の“誤解”と嘘
「関税収入で所得税廃止」は本当か?
トランプ政権が打ち出した「相互関税」などの関税引き上げ政策は、国際貿易を混乱させ、世界経済の不透明感を一気に強めた。
しかし、トランプ大統領は「関税が導入されると、多くの人の所得税が大幅に減税され、場合によっては完全に廃止される可能性がある」と4月28日にSNSに投稿し、関税政策のメリットや正当性を強調する。
だが、そもそも税制を決める権限は、大統領でなく議会にある。ただ関税に関しては、通商法などにより、一定の場合において大統領が議会の承認なしに関税を決めることができることにされている。トランプ大統領はこの権限を使って関税を思うままに操作しているのだ。
しかし、これと同じように大統領が思いのままに所得税制を決める権限はない。したがって、関税のように大統領令だけで簡単に増減税ができるわけではない。
これは明らかなことなのだが、トランプ関税にはより重大な”嘘(うそ)”がある。
トランプ氏が言うような、仮にそうした税制改革が行われた場合、本当にアメリカが豊かになるのかは、きわめて疑問だ。
むしろ格差が拡大し、さらには米国経済全体の生産性が低下するなど、誰も得をしないまま「損失」だけが生まれることになる。