3つの「直感の罠」とは?
これから、本書で取り扱う「直感の罠」3種類について簡単に説明していく。
「確実性の罠」「リスク過敏の罠」「素人意見の罠」である。
それぞれの「罠」の詳しい解説や事例は、ぜひ『絶対達成する決断力のつけ方』で確認いただきたい。
最初に紹介するのが「確実性の罠」だ。
人間は極端な数字に強い影響を受ける傾向があり、この傾向を「確実性効果」もしくは「確実性の罠」と呼ぶ。100%確実でなければ実践したくないという心理的トラップである。
たとえば、拙著『絶対達成マインドのつくり方』で触れた、「モチベーションは100%必要ない」という言葉には高い訴求力がある。しかしこの「100%」が「73%」になったとたん、急激に説得力を失う。
人間は、「100%」や「0%」という極端な確率に、どうしても強く惹きつけられる。
だから、決断できない人は行動計画をつくるときも、「これで本当に100%うまくいくのか?」「この計画はリスクゼロなのか?」とついつい自問自答してしまうのだ。
2つ目は、「リスク過敏の罠」。
人間は目新しいリスクや謎の多いリスク、マスメディアで過大に取り上げられるリスクに対して過敏に反応する傾向がある。
たとえば、セミナーや研修で「絶対達成」の話をすると、
「そんなことを言っても、いまの時代、部下に無理をさせると『パワハラ』と言われてしまう」とか、
「あんまり追いつめて、うつ病になってしまったら困る」
などと言う人がいる。これは「リスク過敏の罠」にはまっている典型例だ。
リスクとは、危険な目に遭う可能性、そして度合いのことである。
そのリスクと出合う「頻度」や「影響の大きさ」を、絶対的な値で認識、比較する努力が必要だ。
にもかかわらず、目標未達成の状態を続けることにより、会社の業績が不安定になったり、自分の夢や目標が叶わなかったりするリスクを正確にとらえている人は多くない。
単純に、過去になじみのない出来事が起こるかもしれない。それに対して過剰に反応しているだけだ。
これはよく考えればわかることである。そんな肝っ玉の小さいことで、目標の「絶対達成」などあり得ない。
こうした「リスク過敏の罠」にとらわれ、冷静な判断ができなくなる人は意外と多いのだ。
また、自分がアクセスしやすい身近な情報を過剰に信じてしまい、論理的な決断ができなくなることを「利用可能性バイアス」と言い、本書では「素人意見の罠」と名づけて紹介している。
この「直感の罠」は、本書において重要な位置づけとなっている「ノイズキャンセリング仕事術」とセットで読んでもらいたい。
高度情報時代になり、このトラップにかかっている人が急増しているからだ。
たとえば、
「この間、ツイッターで得た情報なんですけど、そういうやり方をしていると、かえって問題を増やすだけだそうですよ」だとか、
「最近、ネットで調べていたら、もっと他にいい方法があるみたい」などという発言だ。
これがいわゆる「素人意見の罠」に引っかかっている人の言い分である。
利用しやすいものにアクセスして、自分の都合のいい情報を引き寄せるのだ。
その意見が正しいか正しくないかは別として、素人の意見を鵜呑みにすることこそリスクがある。素人の意見が参考になることもあるだろうが、決断は時間との勝負。
より効率よく、正しい決断をするためには、確率の高い情報にアクセスし続けることを心がけるべきだ。
つまり、その道のプロが発信している情報により多くアクセスすべきである。
その他、本書では「選択のパラドックス」など、決断できない人が陥りやすい「直感の罠」について紹介している。ぜひチェックしていただきたい。
拙著『絶対達成する決断力のつけ方』には、どのようにして「時間の流れをせき止めるか」という大きなテーマと、時間をせき止めたうえで自分の背中をドーン!と押してくれる「インパクト」のかけ方について紹介している。
時間の流れをせき止める「ノイズキャンセリング仕事術」、そして「選好の逆転」と呼ばれる心理現象を生み出すための「儀式のパワー」と「朝の三択」は、ぜひチェックしていただきたいノウハウだ。
これにより、なかなか決断できない人が、思い切った決断をできるようになる事例が多発している。実際にやってみた人は、まるで飛行機で空高く飛び上がったときに感じるような、すがすがしい気分になっている。一度ぜひとも実感していただきたい。
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アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。1969年、名古屋市生まれ。年間100回以上のセミナーは5000名超の経営者/マネジャーを集め、常に満員御礼。企業研修は基本的に価格がつけられず、「時価」。それでも研修依頼はあとを絶たず、向こう8ヵ月先まで予約は埋まっている。ポリシーとして、コンサルティングは質を保つため、年間7~8社しか請け負わない。著書に、ロングセラーとなっている『絶対達成する部下の育て方』『絶対達成マインドのつくり方』(以上、ダイヤモンド社)、『脱会議』(日経BP社)がある。