
米実業家イーロン・マスク氏がロボット重視に転じたことで、電気自動車(EV)大手テスラでは事業モデルだけでなく企業DNAも変わろうとしている。
テスラは約22年前、革新的とまではいかなかったが、シンプルな発想に基づいて設立された。それは、バッテリーの画期的な進歩の類いではなく、既存技術を新たな方法で融合することで、EVは実現可能だというものだった。
現在、テスラは別の道を歩んでいる。発展途上のAI技術によって同社を一変させ、来年末までに恐らく100万台の自動運転車を実現するという賭けに出ている。
テスラは「人間が運転する車に依存した企業」ではなく「ロボット企業」になり得るというマスク氏の賭けによって、同社の時価総額は、自動車メーカーではなく巨大ハイテク企業にふさわしい水準を維持できている。
マスク氏はロボタクシーの一般向けサービス開始をこれまで何度も延期してきたが、今月22日にもテキサス州オースティンで開始する予定だ。だがマスク氏は先週、サービス開始がさらに遅れる可能性を示唆した。
マスク氏は約10年にわたり、テスラの自動運転車が実現間近だと豪語してきた。実現の遅れは、そうした技術を安全かつ効率的に提供することの難しさを浮き彫りにしている。その間、ゼネラル・モーターズ(GM)やアルファベット傘下のウェイモ、アマゾン・ドット・コムの子会社ズークスなどは、運転席に人がいない状態での公道走行を実証してきた。
テスラモーターズ(旧社名)の起源は、一般的な技術であるノートパソコン用バッテリーを車の動力源として使用する、という発想にあった。それまで自動車業界はEV開発に行き詰まっていた。エンジニアたちは完璧なバッテリーを探していたが、コストと航続距離というハードルを乗り越えられず、開発をほぼ断念していた。