「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

子どもに「早く片付けなさい!」と言っても無意味。子どもが動く“すごい言い換え”の中身とは?Photo: Adobe Stock

命令しても子どもは動かない

子育てに奮闘されている親の皆さんの多くは、日々さまざまな悩みがあることと思います。

中でも、次のように言ってしまうことは多いのではないでしょうか。

★Side 1
母親:ゲーム、また出しっぱなしじゃないの。どうして使ったらすぐに片付けないの?
T君:いや、だからM君と遊んでから片付けようと思ってたら、Yちゃんから連絡が入ってきて、そのうちお昼になっちゃったんだもん!
母親:もう! 言い訳はいいからさっさと片づけなさいっ!

どこにでもありそうな親子のやり取りですね。しかし、親からしたら深刻です。

こういったように言ってしまうと、子どもはなかなか動いてくれませんね。

実はこういったときにも、本書の「事実質問」は役に立ちます。今回はその方法について、紹介していきましょう。

「いつ、出したの?」と問い、待つ

では、もうひとつのやり取りを見てみましょう。今度は、「事実質問」に沿ったやりとりです。

★Side 2
母親:ゲーム、また出てる。いつ出したの?
T君:あ、それ朝出したの。
母親:そう。
T君:……今しまうね!

やけにあっさりと片付けてくれましたね。「うまく行き過ぎでは?」と思う人もいるかもしれませんが、これは実際にあった事例をもとにしているものです。

では、この2つの違いはどこから生じたのでしょうか。ここで着目してほしいのが、それぞれのSideにおける母親の発言です。

Side1では、T君は、いきなり言い訳を始めたわけではありません。お母さんから「どうして?」と聞かれたので、それに答えようとしただけです。ところが、それが言い訳がましくなってしまい、それをさらに怒られてしまいました。T君の立場はありませんよね。しかし、Side2では、T君は言い訳せず、すぐにゲーム機を片付け始めました。

事実を突っつき、「信じて待つ」

「なぜ? どうして?」と子どもを(相手を)問い詰めてしまうと、上の例が示すように、最悪の答え、つまり「言い訳」を引き出してしまいます。かと言って、「片付けなさい!」と命令しても、子どもが毎回動いてくれるわけではありません。そんなときには、子どもを事実質問でつっつき、「信じて待つ」のが、有効になります。

事実の確認を通じて、子どもの「気づき」を促す。これが、事実質問の効能です。

対話は、どちらかが質問し、相手がそれに答えることから始まります。

よい人間関係の基本には、よいコミュニケーションがあり、よいコミュニケーションの出発点には、良い質問があるのです。

(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろしです)