いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

ストイックな人は楽しくなさそう?
「あんなにストイックで、人生楽しいのかなぁ」
毎日早起きして勉強をし、つねにポジティブな姿勢で仕事をし、トレーニングで体を鍛え、食事に気を遣い、嗜好品をとらずに早く寝る生活をしている人を見て、友人が漏らした言葉だ。
正直、私も「その生活には憧れない」と思っていた。
自分はストイックという言葉とは無縁だ。自分に甘いと言われようと楽しく生きていきたい。そんなふうに思っていたのである。
しかし、いまシリコンバレーを始め世界に広がっているという「ストイシズム」について知ってから、やや考え方が変わった。
メンタルに効く「ストイシズム」という考え方
ストイシズムは2000年以上前の古代ギリシャで生まれたストア哲学のことで、ストイックという言葉の語源になっている。
ストイシズムは、「自分にコントロールできることに注力せよ」と説く。自分ではコントロールできない他人の言動や外部の問題に煩わされず、淡々とやるべきことをやる。それは心の平静のために、よい人生を送るために大切なことだという。
それがわかってみると、先のストイックな人も、自分の幸せのためにそういう生活を選んでいるだけであって、「無理をしている」わけではないのかなと感じるようになった。節制したほうが幸福だという実感があるから、そのような生活をできるのだろう。
実際、ある程度節制したほうが幸福感は高まる。
たとえばスマホや酒の誘惑に流されて自分をコントロールできなくなっている状態より、自分の意志でスマホから離れることができたり、量を決めて飲んでいるときのほうが幸福感が高い。
「流されない」というのは、いい人生にするうえでとても大切だ。
「ストイックな生き方は楽しくなさそう」というのは誤解だったのだ。
代表的なストア哲学者の一人であるセネカは、「やりすぎなくていいよ」とも言っている。
やりすぎない
また、質素でありながらきちんとした生活を営むことは十分に可能だ。
これがわたしが認める中庸だ。
人生は、聖人の生き方と世間一般の生き方のちょうどいい中間をとるべきだ。
誰もが称賛し、理解もできる生き方をするべきだ。(セネカ『ルキリウスに宛てた道徳書簡集』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
必死になって無理をして聖人君子のようにならなくていいのだ。
余計なことに煩わされず、さまざまな誘惑に流されず、幸福な生き方を選択する。それがまわりの人にはストイックに見えるというだけである。
以前よりストイックになった
『STOIC 人生の教科書ストイシズム』を読み、ストイシズムを学んでから、私は以前より少しストイックな人になった。
酒もスマホも買い物も以前よりはるかに節制できるようになったし、自分が関わった本の評判を知るために10分おきにSNSやランキングをチェックするようなこともなくなった。
環境や体調のせいにせず、つねに淡々と仕事に向かうようになった。
それは我慢しているのではなく、幸福のために行動を選択している結果だ。
「ストイックだよね」と言われるほどではなくゆるいとは思うけれど、自分のことが嫌になるようなだらけ方はしなくなった。
セネカが「やりすぎなくていい」と言ってくれているのも心強い。
ぜひ本書を羅針盤に、やりすぎない「ストイックな生き方」に挑戦してみてほしい。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)