いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

特別なことがなくてもつねに感謝する
人が自分に何かいいことをしてくれたら、感謝をする。
これは当たり前だ。誰でもやっている。
感謝の心に溢れた人は、人が特別に何かしてくれたわけでなくても感謝をする。
実際、考えてみると、この世はありがたいことだらけだ。
美味しいお米が食べられるのはお米を作ってくれている農家さんのおかげだし、流通の仕組みのおかげだし、そのお米を買うことのできるスーパーのおかげだ。お米を買うことのできるお金を手に入れられているのは、仕事があるおかげ。
たくさんの人のおかげで生活が成り立っている。だから、特別なことがあろうとなかろうとつねに感謝していたって何もおかしくはない。
「つねに感謝の心を忘れずに過ごしなさい」とはよく言われることだ。
だが、たいてい忘れてしまう。私もすぐ忘れてしまうのだが、「感謝しているといいことが起こる」という体験はある。
感謝は自分のためになる
以前、植物園でのワークショップに参加した。植物の観察と、絵の描き方のコツを教えてくれるようなワークショップだった。
私はその部屋に入る前から、感謝の気持ちが湧き上がってきていた。この日のためにたくさん準備をしてくださって、なんてありがたいのだろうと心から思ったのだ。
そうしたらこの日、いいことばかりが起きた。抽選に当たったり(プロの描いた植物画をいただいた)、スタッフさんに「素敵なご家族」と言ってもらったり、思いがけずお土産をいただいたり、一緒に参加した子どもたちも嬉しそうで幸せな気分になった。
これが「引き寄せ」というやつなのだろうか、と思った。ますます感謝の気持ちが湧いてくる。
もっとも、冷静に考えてみると、いいことばかりが起こったのはさほど不思議ではない。
「このワークショップはどんなものか、確かめてやろう。時間の無駄になったら怒るが、いい思いをしたら感謝をしよう」という心持ちで参加をしている人と、最初から感謝の気持ちでいる人がいた場合、相手も自然と後者にサービスをしたくなるだろう。
感謝の気持ちを持って接してくれる人に嫌な気持ちを抱く人はいない。値踏みするような態度の人には相手もそのような態度で接するものだが、感謝の気持ちで接する人には相手も好意を返してくれる。その意味では、感謝はいますぐできる「人間関係の最高のスキル」といえる。
あらかじめ感謝している人にいいことが起きるのは、ある意味、当たり前なのだ。
ストア哲学者のセネカも、感謝は自分のためになると言っている。
感謝の心を育てる
他者に対する正義がそうであるのと同様、感謝は自分のためになる。
感謝はその大半が自分に戻ってくる。
他者に利することをして、利を得なかった人はいない。(セネカ『ルキリウスに宛てた道徳書簡集』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
人に思いやりをもって接すれば、自分にも思いやりが返ってくるように、つねに感謝の気持ちを持っていれば、その恩恵が返ってくる。それどころか、セネカ曰く「感謝はその大半が自分に戻ってくる」。
「情けは人のためならず」と言うが、感謝についても同じことが言えるのだ。
「感謝は人のためならず」
この一言を胸に、いつも感謝の気持ちを持つようにしたいと思う。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)