性能面でも妥協はありません。長期優良住宅認定制度の基準を採用し、震度6強~7に耐えられる最高ランクの耐震等級3を実現して、制震システムも導入。断熱性能では国の基準の1段階上となる断熱等級6を標準仕様としています。手抜き工事を防ぐために第三者検査機関による現場調査も5回行っています。

――なぜコストを抑えられるのですか?

鈴木 まずは販管費が低いこと。また、工事を他の工務店に発注せず、自社や加盟店で行うことも大きいです。余計な中間マージンが発生しないので、質の高い住宅をリーズナブルに提供できるのです。

――19年にぽっくハウスを立ち上げた経緯をお聞かせください。

「センスを捨てた家づくり」で業界に革新、適正価格で高性能住宅を静岡から展開ぽっくハウスは6つのデザインスタイルから選択可能。誰でも美しい家づくりを実現できる

鈴木 高校卒業後、住宅に関するいくつかの仕事を経て中堅ハウスメーカーに8年間勤務したのですが、住宅業界の変化を日々、肌で感じていました。

 最大の課題はSNSによってお客さまのデザインに対する要求水準が格段に上がっていたことです。ただ、その要求に応えようとしても、大きな会社はなかなか変わらず、要求に応えられません。それなら自分たちでやってみたいと思い、以前から知っていた芦工匠(ろくしょう)に入社。社内ベンチャーとしてぽっくハウス事業を立ち上げ、24年12月に事業譲渡を受けて独立しました。

 お客さまの要求にきめ細かく応えられるようになったのですが、すべて一からの設計となると、担当者の個人的センスに依存する部分が大きく、品質の均一化が困難でした。この問題を解決するため、6種類のデザインから選ぶ「ぽっくハウス2・0」を開発したのです。独自の見積もりシステムも開発し、簡単な間取りなら10分程度で見積もりが完成します。

――事業譲渡はスムーズでしたか?

鈴木 事業譲渡はそれなりに資金が必要となりますが、メインバンクの他、沼津信用金庫さんも興味を持ってくださり、双方から融資を受けられました。それも後押しとなり、順調に進められました。

 沼津信金さんは他にも、副業者とのマッチングサービスを案内していただいてシステム開発に活用したり、建材メーカーさんをご紹介いただいたりと、融資プラスアルファの価値あるサービスを提供してくださり、感謝しかありません。

――今後の抱負を教えてください。

鈴木 現在、ボランタリーチェーン方式でエリア展開を進めており、静岡県4店舗、愛知県3店舗の計7店舗でぽっくハウスブランドを展開しています。26年には神奈川県西部への進出も予定しています。ぽっくハウス2・0の完成により、属人的なスキルに依存しない家づくりが可能になったので、26年以降はさらにエリアを拡大していきたい。住宅ローンに縛られない豊かな暮らしを一人でも多くの人に提供したいと考えています。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2025年8月号掲載、協力/沼津信用金庫

事業内容:注文住宅ブランド「ぽっくハウス」の設計・施工・販売
従業員数:15人
売上高:10億8000万円(2024年4月期)
所在地:静岡県富士市伝法2069‐4
電話:0545‐30‐6940
URL:pochouse.jp