
ドナルド・トランプ米大統領は重要産業への大規模投資を自由に行える米国の政府系ファンドの創設を望んでいる。日本はその構想に、次善の策を提供する可能性がある。
日米が結んだ貿易協定の一環として、エネルギーや半導体製造、造船といった米国の戦略的産業に日本が5500億ドル(約81兆円)を投資することで合意した。ホワイトハウスによると、トランプ氏が資金の使途に関する最終決定権を持ち、投資による利益の90%を米国が確保するという。
米政府当局者の1人は、トランプ政権はこの取り決めを日本が資金を提供する政府系ファンドのようなものだと考えていると述べた。
日本の代表団と24日に会談したビル・ハガティ上院議員(共和、テネシー州)は、この資金は株式・融資・融資保証で構成され、民間企業ではなく日本政府が拠出することになると述べた。
同氏によると、ソフトバンクグループ(SBG)が人工知能(AI)インフラ整備計画「スターゲート」に最大5000億ドルを投資する約束など、既に行われた民間部門のコミットメントは今回の合意に含まれないという。
「それらとは全く別のものだ」。第1次トランプ政権で駐日大使を務めたハガティ氏はこう述べた。「日本政府のコミットメントだ」
トランプ氏の思い描く通りにファンドが実現すれば――かなりの疑問だが――、米国の大統領が自ら選んだ事業計画に資金を振り向ける前例のない権限を持つことになる。それは潜在的に特定の産業に大きな影響を与えかねず、また米政府が世界最大級の投資会社と競い合うことにもなる。
これまでも貿易協定に投資の約束が含まれることはあったが、日本との取り決めは異例だと、ハーバード大学で日米関係に関するプログラムを率いるクリスティーナ・デービス教授(日本政治学)は述べた。
「今回が通常と異なるのは、大統領の指示の下で投資を行うための一歩であり、利益が米国側に入るという点だ」とデービス氏は述べた。「そのため威圧的で、社会主義的で、過去の貿易交渉に照らしても類を見ないという印象だ」
トランプ氏は米ビジネス界に対し、直接的な役割を果たそうとしている。各企業に値上げをせずに関税を吸収するよう指示し、飲料大手コカ・コーラにはサトウキビ糖をコーラ製品に使用するよう促し、日本製鉄によるUSスチール買収では「黄金株」を手に入れ、日本製鉄のUSスチール運営に広範な権限を持てるようになった。