
給付金も消費減税も物価上昇の原因に対応せず
インフレを「制御」どころか拡大しかねず
参議院選での主要な争点は、与党が主張する一律給付金か、それとも野党が主張する消費税の減税かの選択になっている。
これについて、「財源を示せ」という批判がある。その通りだ。しかし、より本質的な問題は、消費税減税にしても一律給付金にしても、物価高騰を抑える力がないことだ。
これらはいずれも物価高騰を所与とし、「後追い」で経済的補填を行うものに過ぎない。その意味で、物価高騰の「お見舞金」なのだ。物価上昇の原因そのものに手を付けて、物価をコントロールしようとするものではない。
いま本当に問われるべきは、「物価高騰への対応はお見舞金で済む問題なのか?」という根本的な政策対応だ。
物価上昇の原因に手を付けなければ、たとえ一時的に家計の苦しさが和らいでも、来年も再来年も同じ「お見舞い」が必要になる。その次の年も同じだ。
それだけではない。こうした支援策は多くの場合、消費の押し上げを通じて、かえってインフレをあおることになる。
消費税減税によって税込み価格が低下すれば、消費意欲は刺激される。一律給付金の配布も同様に短期的な需要増をもたらす。需要が刺激されれば、供給制約のある分野では価格がさらに上昇する。
つまり、インフレを「コントロール」するどころか「拡大」させる全く逆のことを行っていることになる。
ところが、与党も野党も本当に問われている問題には答えていない。物価上昇の「原因」には目を向けておらず、それを制御する方法についてほとんど何も語っていない。