子育てとは、子どもに同じことを何百万回も言う生活! 誰がやってもそうなるので、どうせ言うなら楽しく言おう
【総フォロワー数48万人】長年の教師生活で多くの親と接したなかから生まれた、熱い思いの詰まった言葉を365個掲載した書籍『子育て365日 親の不安がスーッと消える言葉集』が、あらゆる年代の親に刺さると話題。親力アドバイザーとして名高い教育評論家の親野智可等氏がいま子育て中の人に伝えたいことがあります。

【今日からやる!】子どもが心を開く、親だからこそ簡単にできる会話術とは?Photo: Adobe Stock

小学校の先生だったとき、私はクラスの子どもたちにときどき、自分が子どものころの話をしていました。特に失敗談は子どもたちに大受けでした。

例えば、音楽が苦手で放課後リコーダーの居残り練習をさせられた話。運動も苦手で運動会でビリになった話。数学が苦手で英語が得意だった話。そろばんの試験に落ちた話。

ウソをついた話。給食のマーマレードが食べられなかった話。先生に叱られた話。かくれんぼのとき肥だめに落ちた話などです。

次のような話もしました。よくやった遊びの話。熱中していたこと。好きだった食べ物。嫌いだった食べ物。子どもの頃の悩み。遊園地に行って楽しかったこと。頭にきた話。悲しくて泣いた話。面白くて笑った話。

ときにはがんばった話もしました。例えば水泳の話です。私は水泳が苦手で小学生の頃はまったく泳げませんでした。それで、「なんとか泳げるようになりたい」という思いで、中学1年生の夏休みに、同じく泳げない友だちと頻繁に、学校のプールに通いました。

「顔をつけなくてもよくて、息継ぎも必要ない犬かきがいいだろう」ということで、一生懸命練習しました。犬かきの手の掻き方、掻いた手の戻し方、足の動かし方などを試行錯誤しているうちに、かなりの距離を泳げるようになりました。

これで自信がつき、クロール・平泳ぎ・背泳ぎなどもできるようになりました。この話には子どもたちがけっこう感動してくれました。

こういう話になると、それまでぼうっとしていた子も、にこにこしながら話を聞きます。そして、先生にもそういうときがあったんだとわかり、ぐっと親しみが増すようです。一人の人間同士として共感を覚え、心がつながるのだと思います。

ですから、親御さんたちも、わが子に自分が子どものころの話をしてあげてほしいと思います。みなさんのお子さんは、みなさんが子どものころのことをどれだけ知っていますか? ほとんど知らないのではないでしょうか?

どうしても「これしちゃダメ。あれしちゃダメ。ああしなさい。こうしなさい」というような話が多くなっていると思います。でも、こればかりだと、子どもたちは「また始まった」という感じで聞く気になれません。

みなさん自身の物語をしてあげると、親と子の心が一人の人間同士としてつながります。と同時に、子どもに生きるうえでのヒントや、考える材料を見せてあげることもできます。

子どもたちは経験が少ないので、生き方や人生というものがわかっていません。自分の経験、アニメ、マンガ、文学、伝記などで少しずつ学んでいくわけですが、親の経験は、目の前にある生きた実例であり、モデルです。

失敗も成功も、あれもこれもすべてひっくるめて、それは生きた文学といっていいでしょう。お父さんも忘れ物が多かったんだ、お母さんも水泳が苦手だったんだ、などとわかってホッとするかもしれません。

「お父さんはこういうときこうしていたんだ! なるほど、いい方法だな」とか「お母さんはこういうことをして後で反省したんだ。私も気をつけよう」など、何らかの教訓を学ぶかも知れません。それらのすべてが子どもの栄養になります。

また、親の失敗談を聞いていると、子どもも自分の失敗談や悩みを話しやすくなるという効果もあります。心理学でいう「自己開示の法則」が働くからです。子どもに何か悩みがあるようだと感じた場合、自分の体験を話してあげると、子どもも話してくれるかもしれません。

なお、自分の物語を話してあげるときは次のことに気をつけてください。

1.過度に教訓めいた話や、自慢話にならない
2.子どもが興味なさそうだったら、聞くことを無理強いしない

◆本原稿は、『子育て365日 親の不安がスーッと消える言葉集』の著者・親野智可等が子どもに関わるすべての人に伝えたい書きおろしメッセージです。