スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。
世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長のデビュー作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となっている。
ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏も、
「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」
と語った本書の要点と本に掲載できなかった最新情報をコンパクトに解説する本連載。
「情報7daysニュースキャスター」や「朝日新聞be on Saturdayフロントランナー」出演で話題の著者が、スタンフォードから最新の「科学的な子育て」をお届けする。
すぐに叱ってはいけない
脳科学的理由とは?
「子育ては難しい……」
常に心配やイライラがつきもの。
子どものことを思れば思うほど、さらにプレッシャーを感じて辛くなるという悪循環になりがちです。
けれど、忙しくて、子育てにかける時間もお金も余裕がない。
ますます複雑化していく社会で、子育ても困難を極めています。
ネットやテレビで、あれがいい、これがいいと聞いても、一体どれを頼りにすればいいのでしょう。
そこで今回は、科学的な根拠があり、かつ最も簡単で効果的な子育てのテクニックをお伝えしていきましょう。
まず、「子どもにすぐに叱っても逆効果」になることを知っておきましょう。
愛するわが子のためと思い、つい言いすぎてしまうものですが、これは脳科学の観点から絶対避けるべきことなのです。
一体、なぜでしょうか?
脳の2大機能とは?
まずは人間の脳の2つの機能を理解することです。
1つ目は、嬉しい時、イライラする時、楽しい時、悲しい時など、感情を「感じる」機能。
2つ目は、論理的に考えたり、分析したり、理性的に「考える」機能です。
これらは左右の脳の違う部分でカバーされていて、大まかにいえば、右脳は感情的な機能を、左脳は理性的な機能を担っています。
そして、この2つの機能が相互に働くことで、人は怒りの感情を理性的な脳でうまく制御することができます。
そうすることで、冷静な対応ができるようになるのです。
ですが、子どもの脳は、この「理性的な脳」がまだ未発達。
ですから、子どもは感情的になったとき、昂った気持ちを抑えることが難しいのです。
感情が昂った状態では、左脳が理性の機能を働かせることができません。
ですから、その状態では、やるべきことを論理的に順序立てて考えたり、親の指示や指導を理解しようとすることが難しいのです。
この構造を理解すると、なぜ子どもにすぐ叱ることが適切ではないかわかりますね。
感情が昂っている、理性的な脳がうまく働いていない状態では、子どもの脳はメッセージをうまく飲み込むことができないのです。
では、子どもが泣き出したり、カッとなっている!
でもその場で教えるべきことを教えたい。
そんな時は、どうすればいいでしょう?
そんな時に使える、脳科学的に正しい子育てのテクニックを一つ紹介しましょう。
「コネクト&リダイレクト」で
子どもが泣き出したり、カッとなってしまったりしたときに取るべき「科学的根拠に基づいた」テクニックがあります。
それが、「コネクト&リダイレクト」というテクニックです。
これは世界的なベストセラー作家でカリフォルニア大学ロサンゼルス校のダン・シーゲルスが提唱するものです。
子どもの感情が昂っているとき、まずは「コネクト」することが重要です。
つまり、子どもの心とつながることから始めます。
たとえば、小さい子どもなら、抱っこしてあやしてあげたり、背中をなでてあげたりして、気持ちを落ち着かせてあげる。
ある程度言葉が通じる子どもなら、
「そうか、そうか、嫌なんだね」
「怒ったんだねぇ」
と、子どもの気持ちを言葉に出してあげる。
このように、まずはこちらが「気持ちを理解した」ことを行動や言葉で伝え、心と心をつなげていくことが大切です。
そして、子どもが落ち着いてきたら、「リダイレクト」と呼ばれる次のステップに移ります。
これは、子どもの気持ちを「向き直す」という意味です。
まずは先ほど説明した「コネクト」を行い、子どもが落ち着いた状態になってから、感情が昂っていたときのことを思い出させましょう。
その中で、さっきやるべきだったこと、やってはいけなかったことなどを改めて説明していきます。
そうすれば、きっと子どもはあなたの言葉に素直に耳を貸してくれるはずです。
この2つのステップを踏むことで、オーバーヒートしていた右脳が落ち着き、未発達の左脳でも物事を理解する準備ができた状態で、やるべきことと、やってはいけないことを説明できます。
これが理にかなった声がけ法なのです。
これに加え、子どもが怒ったり、泣いたりしたときに、やさしく落ち着けるようサポートすることは、子どもが自分の気持ちを落ち着かせるスキルを身につけるためのトレーニングにもなります。
「叱るなと言われても、それではなんだか、子どもを甘やかしているような気がする……」
そのように感じるかもしれませんが、「子どもを甘やかしている」のではなく、「成長のための重要なプロセス」だと考えましょう。
ちょうど、鉛筆が持てない子に対して、まず一緒に鉛筆を持って書かせてあげるイメージをしてみてください。
どんな子でも、最初はうまく鉛筆を使いこなせません。
でも、何度もサポートしながら鉛筆を使っていくうちに、自分一人で書けるようになります。
感情のコントロールについても同様です。
感情が昂ってしまったとき、子どもはどうすれば心を落ち着けることができるのかわかりません。
そこで、大人がサポートして、何度も練習を繰り返すことで、やっと自分で感情を抑えられるようになります。
そうしたサポートなしでは、感情を落ち着かせるスキルを身につけるのが遅くなってしまうかもしれません。
このように、子どもがカッとなったときに、すぐにしつけない。
まずは「コネクト&リダイレクト」で感情を落ち着けてから説明することが、子どもを成長させる近道なのです。
心がけ次第で今日から実践できるテクニックなので、ぜひ「コネクト&リダイレクト」を子育てに取り入れてみてください。
そして、今回紹介したような子どもとの会話で意識するべきポイントや信頼関係の築き方については、私のデビュー作『スタンフォード式生き抜く力』の中でも数多く紹介していますのでぜひご覧ください。
さらに、本記事の内容は、最新刊『全米トップ校が親に教える57のこと』により詳しく書いてあるので、あわせてこちらもご参考にしていただけたらと思います。