自分の体が
機械に置き換えられる!?

いのちの未来『いのちの未来-2075 人間はロボットになり、ロボットは人間になる』(石黒浩 著、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」クリエイティブチーム 編、日本経済新聞出版、税込2750円)

 正直、かなり大胆な、驚嘆すべき「50年後」が描かれる。

 ディストピアではない。だが、人によってはそら恐ろしく感じるところもあるかもしれない。それでも、この未来は、現在の科学技術の延長線上に実現する可能性が十分あるものなのだ。

 読者の皆さんにも、本を読んで驚いてほしいので詳細は省くが、石黒氏が予測する未来社会では、ロボットやアバターが大活躍する。人間と、ロボットやAIが「融合」する。人間のさまざまな能力を、AIやロボットに置き換えられるようになるという。

 そうすると、個人は生身の体から解放される。状況や目的に応じて、自分の体を機械に置き換えられるようになる。例えば、空を飛びたいときはドローンの体を用い、道を早く移動したいときは車の体を用いる。人と話をしたいときは人間らしい体を用いる、というようにだ。

 荒唐無稽と思うかもしれないが、よく考えてみてほしい。現在でも、インターネットやスマートフォン、そしてChatGPTなどの生成AIは、人間の能力を拡張している。現代だって、50年前からすると、おそらく想像もつかず、荒唐無稽と思われるような「未来」なのだ。

 言うまでもなく、石黒氏の描く未来は絶対ではない。可能性の1つに過ぎない。そして、もしこれに近い未来がやって来たとしても、私たちは「選択できる」ことだろう。

つまり、「機械の体を使わない」こともできる。本書の後半にある、万博パビリオンの展示紹介では、登場人物を配した未来のストーリーを楽しめるのだが、そこでも「選択するシーン」が織り込まれている。

 未来の人間になったつもりで、本を読んでみてほしい。あなたはどんな「選択」をするのだろうか?

睡眠中の「夢」が
創造性を育てる

 1冊目の紹介では、未来の夢を描くことをお勧めしたが、次に取り上げるのは、睡眠中に見る「夢」についての本『夢を見る技術』(光文社)。最新の脳神経科学の知見などをもとに、夢を見るメカニズム、夢の潜在能力とその活用法といった内容を深掘りする一冊だ。

 酷暑といった気候の変化で体を壊さないためには、十分な睡眠をとることが大事だ。しかし、中には寝る時間がもったいない、という人がいるかもしれない。

 そんな人には本書がオススメだ。米国の脳神経外科医、神経生物学者であり、難度の高いがん手術もこなすというラウール・ジャンディアル氏が、確かなエビデンスをもとに解説する本書を読めば、夢をプラスに活用することで、眠っている時間も決して無駄にならないことがよく理解できるはずだ。

 夢をよく見る、これは「見た夢を覚えている」ということだが、そういう人なら、いかに夢が支離滅裂かをよく知っているだろう。現実に近いシチュエーションであっても、夢の世界では、そこにいるはずのない人間が、前後の脈絡がない話をしたり、考えられないような行動を取ったりする。

 これは、脳内の「エグゼクティブ・ネットワーク」という、論理や秩序を司る働きが、睡眠中に停止するからだ。

 その代わりに動き出すのが「デフォルト・モード・ネットワーク」で、脳内に散らばったさまざまな領域がランダムに活性化する。そのランダムさが、実は、人の創造性に結びつくのだという。

 新しいアイデアやイノベーションは、ランダムに新しい視点や知識を取り入れて、思いもかけない組み合わせが見つかることで生まれたりする。