銀行員のアシュトーシュ・シンさん(36)はこの数カ月の間に、にわかに人気者になった。変わったことといえば、インド西部グジャラート州で初めて開業したバーに入店できる許可証を取得したことだ。シンさんには週に15~20件の電話がかかってくる。知らない人からも多く、内容は一緒に飲みに行かせてほしいというものだ。60年以上にわたって酒類がほぼ禁止されているグジャラート州では、飲みに行くというのは全く新しい体験だ。「時にはキャプテン・アメリカ(米国コミックの主人公)になったような気分になる」。シンさんはそう話す。「立派な仕事だ」インドでビジネスをする企業の幹部は、複雑な規制や大量の事務手続きに慣れている。こうしたお役所的ハードルは、仕事帰りのビールにも及んでいる。今も宗教的・文化的に飲酒が好ましくないとされている地域では、1杯のカクテルにありつくのに大変な労力を要する。 グジャラート州はマハトマ・ガンジーなど著名な禁酒主義者を輩出しているが、昨年思い切った実験を始めた。グーグルや法人向けソフトウエア大手オラクル、バンク・オブ・アメリカ(BofA)などグローバル企業が進出する経済特区「ギフトシティー」で、バーの営業を認めたのだ。外国人投資家から見た特区の魅力を高めるのが狙いだ。
仕事帰りの一杯、インドでは仕事より大変
バーに入るのに家を買うより多くの書類が必要な地域も
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