「一生懸命に考えたのに、思ったように伝わらない」「焦りと不安から自分でも何を話しているかわからなくなってしまう」…。言っていることは同じなのに、伝え方ひとつで「なんでこんなに差がつくんだろう」と自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
コンサルタントとして活躍し、ベストセラー著者でもある田中耕比古氏の著書『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』から、優秀なコンサルが実践する「誰にでもできるコミュニケーション術」を本記事で紹介します。

思考に「軸があるか」で差がつく
「ちゃんと考えたつもりだったんです……」
説明が伝わらなかったとき、あるいは、議論がかみ合わなかったときに、おもわず口にしたくなる「つもり」という言葉。
こう言いたくなるのも無理はありません。何かを話すときに、何も考えずに話し始める人はほとんどいないでしょう。
みんな自分なりに、「何を話そうか、どう話そうか」をちゃんと考えて、筋道を立てて話しているはずです。
しかし実際には、考えがまとまりきっておらず、伝わりにくい話になってしまう人もいます。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
「考えた」と「考えたつもり」の違いは、どこにあるのでしょう。
この差を生むのは、思考に「軸」があるかどうか、です。
軸がない思考は、単なる思いつき、あるいは、断片をつなぎ合わせただけの「整理したっぽい」情報の羅列にすぎません。
本人の中ではある程度納得していたとしても、それを誰かに伝えようとした瞬間に、そのもろさが明らかになるのです。
思考に軸を持たせるための方策は、考え方のテンプレを持つことです。
まずは、「頭の中のモヤモヤを、言葉として整理する」ためのテンプレを紹介していきます。
ぼんやり思っていること、何となく感じていることを言葉にする。つまり「言語化」の話です。
ふだんの仕事やプライベートの会話の中で、「自分の考えをどう伝えるか」に悩む場面は多いと思います。それを解消するために、まずは「自分の考えを言語化する技術」を身につけるところからスタートしましょう。
言語化するために、最初に行うべきことは「自分の頭の中身を、漏れなく洗い出すこと」です。
勝手気ままに思いをめぐらしていても、網羅的な考えにはなりません。
ルールにのっとって考えをまとめていくことで、抜け漏れをなくすことができます。
そのための、最もシンプルで再現性の高い方法の一つが「時系列」で考えることです。
私が後輩や部下に「考え方」を教える場面で、この「時系列で考える」という手法は非常に有用でした。
「朝起きてから、家を出るまでにやることを全部挙げてみて」と伝えたときに、多くの人は「歯磨き、着替え、コーヒー、天気予報……」と、思いつく順にバラバラに並べてしまいます。
そこに「起きた瞬間から、“順番に思い出して”みて」と、時系列の考え方を加えると、出てくる回答は、「目覚める→ベッドから出る→洗面所に行く→顔を洗う→……」と抜け漏れがないものに変わりました。
“時間の流れ”という軸を与えることで、思考の精度がぐっと上がるわけです。
(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の一部を抜粋・編集したものです)