
今や全国から多くの依頼者が訪れる同ラボの強みはどこにあるのか。一つ目は、萩原氏の歯科技工士としての経験値だ。
「個人差のある体や肌の特性に合わせ、石こうによる型取りや使う素材の知識、微細な造形力、フィッティングの調整など、培ってきた技術力が生かされていると自負しています」と萩原氏。
二つ目が、熱い思いとコミュニケーション力だ。本物そっくりに作ればいいというだけでなく、「生活のどのシーンでエピテーゼを使用するのか。何に困っていて、何を解決したいのか。抱える悩みや思いに寄り添い、依頼者によって異なる最適なエピテーゼのイメージを慎重に探るプロセスを大事にしています」と言う。

時にはがん終末期の患者が家族との食事を楽しみたいと、顔面補綴を依頼してくるようなセンシティブなケースもある。
「依頼者に合ったエピテーゼが完成し、鏡の前で装着した際の『いいね』という笑顔を目の前にすると、苦労が一気に報われます」と言う。エピテーゼによって外食や公共施設での入浴、おしゃれなど、今まで諦めていたことが実現し、「依頼者が抱える『何かがない』という欠乏感を少しでも補えたら、という思いで仕事に向き合っています」と言う。
心身のさらなる負荷低減に向けた技術革新も怠らない。3Dなどデジタル技術の実用化を、他企業と連携し進めている。
エピテーゼ普及に向け
技術者養成も手がける
現在、エピテーゼ事業以外にも、エピテーゼ技術者養成スクールの運営、エピテーゼ技術者の連携と技術標準化を目的に設立した「一般社団法人全日本エピテーゼ連盟」の会長も務める。積極的に活動の幅を広げる背景には、エピテーゼの正しい理解を広めたいという思いがある。「スクールや連盟での情報交換会でも、依頼者の満足度を最優先に高いクオリティーを維持する重要性を徹底しています」と萩原氏。今後は、がん患者向けが中心というエピテーゼのさらなる普及に向けた活動を促進していく構えだ。
(「しんきん経営情報」2025年9月号掲載、協力/高崎信用金庫)
事業内容:オーダーメードのエピテーゼ製作、エピテーゼ技術者の育成など
従業員数:2人
所在地:群馬県高崎市片岡町3‐25‐5
電話:027‐384‐4084
URL:medical-lab-k.com