米政府のインテル株取得、 「共和党版社会主義」と批判もPhoto:Chip Somodevilla/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領の最も新しい経済的措置は、保守派からは反発を、一部の左派からは称賛を呼んでおり、同氏独特の世界観がまたも敵味方を逆転させるような奇妙な状況を生んでいる。

 米政府が不振の米半導体大手インテルの株式10%を取得する計画が発表されると、右派からは産業の国有化だとする批判が噴出した。ランド・ポール米上院議員(共和、ケンタッキー州)は22日、「今日はインテル、あすは他の業界かもしれない」とし、「社会主義とは文字通り、政府による生産手段の支配だ」と述べた。

 これは自称社会主義者のバーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州)には心地よく聞こえた。同氏は自身が提出した法案にそっくりだとして、今回の措置を称賛した。22日に「納税者はインテルのようにもうかっている大手企業に、何の見返りもなく巨額の企業向け助成金を提供すべきではない」と述べ、政権にさらなる措置を求めた。

 22日発表の合意によると、2022年のCHIPS・科学法に基づきインテルに補助金約90億ドル(約1兆3300億円)を支給する代わりに同社株を取得し、米政府が同社の筆頭株主となる。ハワード・ラトニック商務長官は同日、この合意は「米国の経済を成長させるとともに、技術的優位性の確保の一助となる」と述べた。

 トランプ氏は22日に大統領執務室で、インテルの最高経営責任者(CEO)の辞任を求めていた時から考えを変えたと発言。「『あなたはわれわれに会社の10%を支払うべきだ』と私が言い、彼らはイエスと言った」と述べた。

 ケビン・ハセット米国家経済会議(NEC)委員長は25日、米CNBCの番組で、政府が企業の株式取得を拡大する可能性があると述べた。

 共和党を特徴付けていた自由市場経済を是とする立場にトランプ氏が背を向けたのは、今回が初めてではない。同氏は関税に対する思い入れが強く、日本製鉄などの企業の株式も取得する。一部では、政府が民間部門に広範な支配力を振るう中国の「国家資本主義」に似ているとの指摘もある。