
ソフトバンクグループ(SBG)が米インテルに20億ドル(約3000億円)を出資する合意は、苦境にあるこの半導体メーカーに命綱を差し伸べるものだ。今回の出資によってSBGは、かつての米巨大半導体企業・インテルを再生させるトランプ政権の取り組みにおいて、民間部門を代表する推進者となる。
この問題に詳しい人々によると、SBGによる出資は同社のデータセンター合弁事業「スターゲート計画」やアリゾナ州での人工知能(AI)・ロボティクス拠点創設構想といった大規模プロジェクト向けに、将来、半導体やAIハードウエアの供給を確保するのに役立つ可能性がある。またこの出資は、SBGは半導体調達でアジアに依存する度合いを引き下げ、米国での生産能力を構築できる可能性もある。事情をよく知る人々によれば、SBGは今年、インテルの半導体製造事業の買収について協議したが、合意には至らなかった。
インテルへの投資は、追い詰められた半導体メーカーである同社を救う米政府の取り組みと時期が重なった。これにより、SBGの孫正義会長兼社長は、トランプ氏の新たな戦略的優先課題における重要人物に位置付けられた。トランプ政権当局者は、インテルの将来見通しを好転させ、米国の半導体製造業を強化するために、同社の10%の株式を取得することについて協議している。
ハワード・ラトニック米商務長官は、バイデン政権下で半導体・科学法(CHIPS法)に基づき約束された数十億ドルの資金をインテルが受け取る見返りに、政府がインテル株を取得することに向け、同社と協議中だと認めた。ただし、ラトニック氏はCNBCのインタビューで、こうした計画が実現して米政府が最大級の株主になったとしても、米政府がインテルの議決権を得ることはないと述べた。
ラトニック氏は「統治ではない。バイデン政権下で補助金だったものを株式に変えるだけだ。議決権はない」と語った。
インテルの株価は、19日午後に約7%上昇した。インテルのリップブー・タン最高経営責任者(CEO)は、SBGの社外取締役を2年間務めたことがある。彼は、機械学習・データ分析プラットフォーム開発を手がけるサンバノバシステムズの会長も務めている。SBGは、サンバノバの出資企業の一つだ。